コインベース、決算未達とAWS障害で信頼性が試される

米最大の暗号資産取引所であるコインベースは、2025年1月から3月までの四半期決算で市場予想を下回る業績を発表し、その後に発生したAmazon Web Services(AWS)の障害によるサービス停止で、投資家の信頼を再び試されることとなった。

同社は、暗号資産取引サイクルへの依存度が依然として高い一方で、ステーブルコイン、デリバティブ、予測市場、AIを活用した決済といった次世代金融インフラの構築に注力し始めている。しかし、直近の決算とシステム障害は、同社の二つの相反するストーリーを浮き彫りにした。

四半期決算:市場予想を下回る売上高と損失

コインベースは、2025年3月31日終了の四半期で売上高14億1,000万ドル(約2,100億円)を計上したが、市場予想の15億2,000万ドル(約2,300億円)を下回った。1株当たり損失は1.49ドル(約220円)で、市場は利益を予想していた。取引活動の低迷が主な要因で、同社は2四半期連続の赤字となる3億9,410万ドル(約580億円)の純損失を計上した。前年同期は6,560万ドル(約98億円)の黒字だった。

特に顕著だったのが取引手数料収入の落ち込みだ。顧客の取引活動に依存する同社の主力収入源である取引手数料収入は7億5,580万ドル(約1,100億円)で、アナリスト予想の8億500万ドル(約1,200億円)を下回った。個人向け取引手数料収入は前四半期比23%減の5億6,700万ドル(約840億円)、機関投資家向けは27%減の1億3,600万ドル(約200億円)、その他取引手数料収入は17%減の5,300万ドル(約79億円)となった。

この落ち込みの背景には、暗号資産市場の低迷がある。CoinGlassのデータによると、ビットコインは2025年第1四半期に20%以上下落し、暗号資産取引所の収益を支える投機的な取引活動が減少した。価格下落と取引量の減少は、他の暗号資産関連企業にも影響を与え、リスク資産からの撤退が進んだ。

コインベース、次世代金融インフラへの転換を強調

コインベースのCEO、ブライアン・アームストロング氏は、決算発表後の電話会議で、暗号資産インフラが新たな段階に移行していると主張した。アームストロング氏は、オンチェーン経済が「脱出速度」に達したと述べ、同社のフルスタックプラットフォームが、ステーブルコインを活用したAIエージェントなど、次世代の金融活動を捉える準備が整っていると強調した。

同社はすでに事業の多角化を進めており、サブスクリプション・サービス部門が取引高に直接依存しないステーブルコイン、ステーキング、カストディ、その他のサービスを中心に拡大している。例えば、ステーブルコイン関連の収益は四半期で3億500万ドル(約450億円)に達し、前年同期の2億7,400万ドル(約410億円)から増加した。この成長は、USDCの時価総額上昇と、コインベース製品におけるUSDC残高の記録的な平均値の増加によるものだ。

同社はまた、スポット取引とデリバティブ取引の両方で世界的なシェアを獲得し、過去最高の取引高を記録したと発表した。

AWS障害で5時間以上のサービス停止

決算発表後、コインベースはAWSの障害により、5時間以上にわたってサービスが停止した。同社は、障害の原因がAWS側にあることを明らかにしたが、顧客への影響は大きく、サービスの信頼性に対する懸念が高まった。

アームストロング氏は、この障害を「残念な出来事」としながらも、同社のインフラの強化と冗長性の向上が必要であると認めた。同社は、今後もシステムの安定性とセキュリティの向上に取り組むとしている。

2030年までに300兆円規模への成長を目指す

アームストロング氏は、コインベースの長期的な成長戦略についても言及した。同氏は、オンチェーン経済の成長が加速しており、コインベースが次世代の金融インフラを提供するリーダーとなる可能性を示唆した。具体的には、AIとステーブルコインを活用した決済システムの構築や、暗号資産の新たなユースケースの開拓を進めるとしている。

同社は、現在の取引所としての役割から脱却し、暗号資産のインフラプロバイダーとしての地位を確立することを目指している。この戦略が成功すれば、2030年までに300兆円規模の市場を獲得する可能性があると、同氏は強調した。

「我々は、暗号資産のインフラが新たな段階に入ったと確信している。コインベースは、そのリーダーとして、オンチェーン経済の成長を支える基盤を提供する準備ができている。」
— ブライアン・アームストロング、コインベースCEO

今後の展望と課題

  • 取引活動の回復:暗号資産市場の回復と取引高の増加が、同社の主力収入源である取引手数料収入の回復につながるかどうかが鍵となる。
  • インフラの強化:AWS障害のようなシステムダウンを防ぐため、インフラの冗長性と安定性の向上が急務だ。
  • 新たな収益源の拡大:ステーブルコイン、ステーキング、AIを活用した決済など、取引高に依存しない新たな収益源の拡大が求められる。
  • 規制環境の整備:暗号資産業界全体の規制環境が整備される中、コインベースのビジネスモデルがどのように適応していくかが重要だ。