ミャンマーの軍事政権は、暗号詐欺センターへの参加を強要するために暴力や拷問を行う犯罪者に対し、死刑を含む厳罰を科す法案を発表した。
シンガポールのニュースメディア「CNA」によると、同国の「反オンライン詐欺法案(Anti-Online Scam Bill)」の草案が公表された。法案では、「暴力、拷問、不法な逮捕・拘束、残虐行為」を用いて他者にオンライン詐欺への加担を強要した者に対し、死刑が適用される可能性があると明記されている。
同法案は、2021年のクーデターで政権を掌握した軍事政権が6月に議会に復帰した後に審議される見通しだ。
軍事政権の「見せかけの摘発」に批判も
ミャンマー軍は先月、タイ国境付近に位置する暗号詐欺拠点「KK Park」を強制捜査したが、被害者の脱出や逮捕、建物の解体などが行われたものの、実態は「見せかけの摘発」だったとの指摘が上がっている。現地メディア「The Irrawaddy」や「Myanmar Witness」によると、分析官や住民らは、この作戦が主に「国際社会へのアピール」を目的としたものだったと分析している。
また、同国では暗号詐欺センターの運営者や暗号詐欺の実行者に対し、終身刑が科される可能性があるとの報道もある。ただし、詐欺への参加を強要された被害者に対しても同様の刑罰が適用されるかは不明だ。
さらに、ミャンマーの大統領であるミン・アウン・フラインは先月、全ての死刑判決を終身刑に減刑したが、暗号詐欺に関連する犯罪にはより厳しい対応が取られる見込みだ。
暗号詐欺産業の拠点化が進む東南アジア
暗号詐欺産業は、ミャンマーの国境地帯をはじめ、カンボジアやラオスなどの東南アジア諸国に多数の拠点を構築してきた。総額10億ドル以上の資産が凍結される事態も発生している。
その象徴的な存在が、プリンスグループCEOのチェン・ツー(Chen Zi)だ。香港高等法院は先日、チェン氏が所有する資産90億香港ドル(約11億5,000万ドル)の凍結を命じた。チェン氏は現在中国で拘束されており、2024年1月にカンボジアから中国への身柄引き渡しが行われた。同氏は、暗号詐欺センターの運営を含む巨大犯罪組織の首謀者として起訴されている。
また、チェン氏とその関連企業は昨年、米国と英国から制裁を受けたほか、カンボジアの政治エリート一族が30%を所有していたとされる暗号詐欺関連企業「Huione Group」の金融部門「Huione Pay」の銀行免許も昨年取り消された。
さらに、Huione Payとの関連が指摘される「Panda Bank」も昨年2月に免許を取り消され、同行のアプリが今月、アプリストアから削除されることが発表された。
周辺国との連携で犯罪組織の壊滅を目指す
暗号詐欺産業は、東南アジア全域に拠点を拡大しており、中国や米国、英国などによる国際的な取り締まり強化が進んでいる。ミャンマー軍事政権による今回の法案も、こうした動きの一環とみられる。
一方で、軍事政権による「見せかけの摘発」が繰り返される中、実効的な犯罪組織の壊滅には、周辺国とのさらなる協力が不可欠との声が上がっている。