「スター」よりも「チームプレイヤー」の方が成果を上げる

現代の職場では、個人主義の風潮から「スター」として目立つことが重視されがちだ。しかし、そのような自己中心的な行動はチームの信頼を損ね、結果的に成果を下げる要因となる。実際、チームの成功に最も重要なのは、メンバー同士の信頼とコミュニケーションであり、個人の技術力ではないことが研究で明らかになっている。

チームの成功を左右する「信頼」と「リスニング」

マッキンゼーの調査によると、個人のスター性が高い人材が必ずしもチームの成功につながるわけではないという。むしろ、メンバー間の信頼関係とリスニングが重視されるチームの方が、問題解決力やイノベーションを生み出すことがわかった。Googleの「Project Aristotle」でも同様の結論が示されており、最も優れたチームは「最も優秀な人材」で構成されているのではなく、メンバー同士の信頼とリスニングが徹底されているチームだった。

また、ヴュルツブルク大学のニコ・エルバート氏が率いる大規模研究では、技術力は高くなくとも、チームの社会的相互作用を向上させることで、チーム全体の成果を高める個人が存在することが明らかになった。これは、個人の技術力よりも、チーム内の人間関係がいかに重要かを示している。

NASAミッションのリーダー経験から学ぶ

筆者はNASAの Psyche ミッション(10億ドル規模のプロジェクト)のリーダーや、カリフォルニア大学バークレー校の Space Sciences Laboratory(250人規模)のディレクターを務めてきた経験から、最も優れたチームは「スター」と「チームプレイヤー」の両方の要素を兼ね備えたメンバーで構成されていると実感している。個人の能力だけでなく、チーム全体のパフォーマンスを最大化することが、真の成果につながるのだ。

個人から始める「スター」と「チームプレイヤー」の両立術

チームの成果を最大化し、同時に個人としても評価されるための第一歩は、自分自身の行動から変えることだ。以下に、チームと個人の両方で成果を上げるための5つのスキルを紹介する。

1. 明確で穏やかな発言を心がける

発言する際は、話題を明確にし、穏やかな口調で伝えることが重要だ。これにより、メンバーは安心して協力しやすくなる。ジョージタウン大学のクリスティン・ポース教授によると、穏やかで明確、そして礼儀正しいリーダーは、威圧的なリーダーと比べて、社会的地位で40〜80%高い評価を得るという。また、能力面でも23%高く、影響力でも16%高いというデータが示されている。

2. 問題を早期に発見し、解決に取り組む

チームの目的は、問題を特定し、解決することだ。たとえ自分の担当領域外の問題であっても、チーム全体の課題として積極的に関与することが求められる。筆者が率いたNASAの Psyche ミッションでは、「悪いニュースこそ早めに伝えよう」というモットーを掲げていた。早期に問題を共有し、解決に向けた行動を取ることで、プロジェクト全体の成功につながるのだ。

3. チームのダイナミクスを理解し、調整する

チーム内の人間関係やコミュニケーションの流れを把握し、必要に応じて調整することも重要な役割だ。例えば、会議中の発言が受け入れられにくい雰囲気の場合、発言の仕方を工夫することで、チーム全体の協力体制を強化できる。受動攻撃的な発言が横行するチームでは、メンバー間の信頼が低下し、成果が上がりにくくなる。

4. リスニングとフィードバックの質を高める

メンバーの意見を真摯に聞き、建設的なフィードバックを提供することで、チーム全体のパフォーマンスが向上する。リスニングは単なる聞くことではなく、相手の意図を理解し、適切な反応を示すことが求められる。これにより、メンバーは自分の意見が尊重されていると感じ、より積極的に貢献しようとするようになる。

5. チームの目標を共有し、一体感を醸成する

チーム全体の目標を明確にし、メンバー一人ひとりがその目標に向かって貢献していることを実感できるようにする。目標を共有することで、メンバー間の連帯感が高まり、個々のパフォーマンスが向上する。また、目標達成に向けた進捗状況を定期的に共有することで、チーム全体のモチベーションを維持することができる。

まとめ:個人主義からチーム主義への転換が鍵

現代の職場では、個人の能力だけでなく、チーム全体のパフォーマンスが重視されるようになってきている。個人主義の風潮に流されず、チームプレイヤーとしてのスキルを磨くことで、個人としても高い評価を得ることができる。リーダーシップにおいても、穏やかで明確なコミュニケーションや、早期の問題発見と解決が、チームの成功につながるのだ。

「最も優れたチームは、スターとチームプレイヤーの両方の要素を兼ね備えたメンバーで構成されている」
— NASA Psyche ミッションリーダー、筆者