医師の申請審査を再開、しかし依然として多くの移民が停止状態に
米国南西部インディアナ州で約1,000人の患者を診療するリビア出身の医師ファイスル・アルグーラ氏は、グリーンカードの更新ができずにいる。同氏の現在のビザは9月に失効する見込みだが、トランプ政権が高リスク国とみなした数十カ国出身者の申請審査を停止したため、更新が不可能となっていた。
しかし先週、政権は医師の申請に限り審査を再開するという例外措置を発表した。これにより、アルグーラ氏のケースも進展する可能性が出てきた。医療団体や移民弁護士らは数カ月にわたりこの措置を求めており、米国の医師不足と海外で医学教育を受けた医師の重要性を指摘していた。
医師不足の現状と影響
米国立医学図書館によると、医師不足は深刻で、特に地方や医療サービスが不足する地域では海外で医学教育を受けた医師が大きな役割を果たしている。アルグーラ氏も肺専門医兼集中治療医として、主に農村地域の患者を診療している。
「肺専門医を雇用するには4〜5カ月の待ち時間が必要です」とアルグーラ氏は語る。しかし、今回の措置は医師の申請を審査できるようになっただけで、必ずしもグリーンカードやビザが更新されるわけではない。また、米国市民権・移民局(USCIS)が申請を間に合わせる処理能力を持っているかも不明だ。
医師以外の移民は依然停止状態
一方で、医師以外の研究者や起業家などは依然として申請が停止されている。対象国は39カ国に及び、イラン、アフガニスタン、ベネズエラなどが含まれる。これらの人々は合法的に就労できず、健康保険や運転免許の取得も困難な状況に置かれている。また、米国から出国すると再入国が認められない可能性もある。
トランプ政権は昨年、高リスク国とされた国々のグリーンカードやビザ申請の審査を停止し、今年にはさらに75カ国以上のビザ申請審査も停止した。これは公的支援を求める可能性があるという懸念に基づくものだ。これらの措置は、移民全般に対する厳格な取り締まりの一環とされている。
米国国土安全保障省は、前政権が申請者の審査を適切に行わなかったとしつつ、今回の措置に関する質問には回答しなかった。また、テネシー州メンフィスで活動する移民弁護士グレッグ・シスキンド氏は、「現在行われている多くの禁止措置や停止措置は、合法的に米国に滞在する人々の生活を困難にし、他国へ去らせることを目的としている」と指摘する。
今後の見通しと課題
医師の申請審査が再開されたことは朗報だが、その効果は限定的とみられる。アルグーラ氏自身も、今月控えた更新手続きに不安を感じているという。
「面接に行くのが怖い」と語るアルグーラ氏は、2016年から米国で暮らしている。医師以外の多くの移民にとって、依然として厳しい状況が続いている。