レッドフォードの住民説明会で示された「協力か収用か」のメッセージ
テキサス州レッドフォード(人口71人)で開催された米国陸軍工兵隊主催の住民説明会。トランプ政権は、西テキサスの国境地帯に壁を建設するプロジェクトを巡り、地主に対し「当局の要請に応じて協力するか、それとも強制収用を受け入れるか」の選択を迫った。
「回答がなければ強制収用の意思表示」
説明会に出席した陸軍工兵隊のマービン・マカーウィッチ氏は、高齢の地主らに対し「当局が計画を立て、地主がこれに応じない場合、それは協力しないという意思表示と受け取る」と述べた。さらに「しかし、代替案を模索するための意思疎通も行われていない」と、当局の対応の不透明さを指摘した。
同氏は、国境警備隊(CBP)職員に同行されての発言だった。この説明会は、地元の地主らの招待により開催されたもので、陸軍工兵隊による書簡やメール、電話を通じた説得が、テキサス州西部の国境沿いのコミュニティで行われてきた。
「建設協力」を求める当局の圧力
トランプ政権は、地主に対し「建設権利付与書(Right of Entry for Construction)」への署名を「望ましい理想的な方法」として提示している。この書簡によれば、署名により地主は「建設調査と工事のための土地への完全なアクセス権」を一時的に提供し、その後「公正な市場価値に基づく補償」を受け取ることができるという。
しかし、地主らは「建設後に補償される」という曖昧な表現に不安を募らせている。また、工事の進行に伴い、土地の一部が強制収用される可能性も示唆されている。
工事の急ピッチ化と地元への影響
西テキサスのビッグベンド地域(レッドフォードを含む)では、2027年12月までの完成を目指し、工事が急ピッチで進められている。この地域には、ビッグベンド国立公園や州立公園が位置しており、地元の牧場主や観光業者にとっては生活の基盤となっている。
2024年初頭から、陸軍工兵隊は地主に対し「初期アクセス権」として1,000ドルから5,000ドルの支払いを提示する書簡を送付してきた。しかし、書簡には「不正確な測量線や土地所有者情報」が記載されるなど、混乱が生じているという。
環境規制の緩和と「マン・キャンプ」の設置
トランプ政権は、工事の迅速化を図るため、元国土安全保障長官クリスティ・ノーム氏の下で、28件の環境・文化保護に関する免除措置を発動した。これは「南部国境への侵入が続いている」とするトランプ大統領の大統領令に基づくものだ。
工事業者らは、数百人の労働者を収容するための「マン・キャンプ」を設置し、地元のRVパークを借り上げる計画を進めている。工事開始は6月の予定で、これはちょうど雨季の始まりと重なり、頻繁に発生する洪水リスクとの兼ね合いが懸念されている。
地元住民の反発と不安
地元の地主らは、工事の進行に伴い、土地の分断や環境破壊、観光業への悪影響を懸念している。特に、国立公園周辺での工事は、自然環境や生態系への影響が懸念されるほか、観光客の減少による経済的損失も予想される。
「壁が完成すれば、ビッグベンドの景観は一変する。観光客は来なくなるだろう」と、地元の牧場主は語った。また、工事の急ピッチ化により、安全基準の低下や品質の低下も懸念されている。
当局の対応と今後の展望
陸軍工兵隊は、地主との協議を進める一方で、強制収用の手続きも進めている。地主らは、当局の対応に対し「透明性の欠如」と「強引な手法」を批判している。
今後、工事の進行に伴い、さらなる対立や訴訟の可能性も指摘されている。地元コミュニティの将来にとって、このプロジェクトが与える影響は計り知れない。