米国の薬物政策をめぐり、トランプ政権がハームリダクション(害低減)サービスに対する反対姿勢を強めている。同政権は、違法薬物使用者に対する支援策を制限する方向で動いており、連邦資金の流用を防ぐための指針を発表した。

連邦政府の依存症・精神衛生政策を管轄する米国薬物乱用・精神衛生サービス局(SAMHSA)は、4月24日付の公開書簡で、助成金受給団体に対し、以下のような連邦資金の使用を控えるよう求めた。

  • 滅菌済み注射器やパイプなどのハームリダクション用品の購入
  • フェンタニル、キシラジン、メデトミジンなどの薬物混入物を検出する検査キットの配布

同書簡では、これらの支援策が「薬物使用を助長する可能性がある」との見解を示し、連邦資金の適切な使用を求めている。

ハームリダクションを巡る議論の激化

ハームリダクションは、薬物使用による健康被害や社会的損失を最小限に抑えることを目的とした公衆衛生戦略の一つだ。注射器交換プログラムやオピオイド拮抗薬の配布、薬物検査キットの提供などが代表的な取り組みとして知られる。

しかし、こうした取り組みに対しては、薬物使用を「容認する」との批判も根強い。特に、フェンタニルの流通が拡大する中で、検査キットの配布が薬物使用の増加につながるのではないかとの懸念が指摘されている。

政権の方針転換とその背景

トランプ政権は、前政権とは異なり、ハームリダクションに対する厳しい姿勢を示している。2020年には、連邦資金を使った注射器交換プログラムへの支援を事実上停止したが、今回の書簡はその方針をさらに強化するものだ。

同政権は、ハームリダクションが「薬物使用を助長する」との立場を明確にしており、連邦資金の使用を厳しく制限する姿勢を示している。一方で、依存症治療の拡充や薬物乱用防止策の強化を重視する方針も打ち出している。

「ハームリダクションは、薬物使用を減らすための解決策ではなく、むしろ使用を継続させる要因となる可能性がある。我々は、依存症治療と回復支援に重点を置く」
— 米国薬物政策担当高官

専門家からの批判的な声

こうした政権の方針に対し、公衆衛生の専門家からは批判の声が上がっている。ハームリダクションは、薬物使用者の命を守るための重要な手段であり、特にフェンタニルの流通が拡大する中で、その必要性が高まっていると指摘されている。

米国疾病予防管理センター(CDC)によると、2023年には10万人以上がオピオイド過剰摂取で死亡しており、その多くがフェンタニルに関連している。こうした状況下で、検査キットの配布は、命を救うための重要な手段の一つとされている。

専門家らは、「ハームリダクションは、薬物使用を助長するのではなく、使用者の健康を守り、治療への道を開くための重要なステップだ」と主張している。

出典: STAT News