米ブルーオリジン社の新型ロケット「ニュー・グレン」が、3度目の打ち上げで通信衛星の軌道投入に失敗した。顧客であるAST SpaceMobile社の衛星は、予定より低い軌道にとどまり、事実上の「宇宙ゴミ」と化した。これは同社にとって10年以上にわたる開発の頓挫を意味するだけでなく、NASAの月面有人探査計画「アルテミス計画」にも深刻な影響を及ぼす可能性がある。

米連邦航空局(FAA)による失敗調査は長期化する見通しだ。アメリカン・エンタープライズ研究所のシニアフェロー、トッド・ハリソン氏は「調査に3〜4か月以上かかれば、アルテミス計画に支障をきたす」と指摘する。ニュー・グレンは、NASAがアルテミス計画で月面着陸に使用する「ブルームーン」着陸船を打ち上げる予定のロケットだった。NASAはこの着陸船と、スペースXの「スターシップ」の2機を月面輸送手段として契約しているが、スターシップも未だ実用的な打ち上げに成功しておらず、度重なる爆発事故を起こしている。

アルテミス計画の初の月面着陸は当初2024年を予定していたが、現在は2028年まで延期されている。さらに遅れる可能性もあり、ニュー・グレンの失敗は状況を悪化させる要因となっている。

アルテミス3号ミッションへの影響

NASAは来年以降に予定されているアルテミス3号ミッションで、月周回軌道上での着陸船のテストを計画している。宇宙飛行士は月面には降り立たないが、ドッキング手順の実践が求められる。このテストには、NASAの「スペース・ローンチ・システム(SLS)」と「オリオン宇宙船」の複数回の打ち上げが必要だ。パデュー大学の元NASA幹部で教授のダニエル・ダンバッカー氏は「複数のロケット打ち上げを同時に成功させるという、我々が賭けているシナリオの実現可能性を示す最初の機会になる」と語る。

ニュー・グレンが運用停止のままであれば、ブルームーン着陸船を打ち上げられず、アルテミス3号ミッションへのブルーオリジン社の参加が危ぶまれる。同社は年内に月面への初号機着陸船「マーク1」のテストミッションを計画していたが、はるかに小規模な衛星の軌道投入すら失敗した現状では、計画の実現性に疑問が呈されている。

ダンバッカー氏は「1年後にミッションの全容が見えない状況で、初めて行うミッションに着手するのは非常に不安だ」と述べている。

出典: Futurism