イタリア北部、コモ湖のほとりで毎年開催される「ヴィラ・デステオークション」。2024年5月中旬に開催されるこのオークションでは、フェラーリ、ランボルギーニ、ランチャ、ビザリーニ、パガーニといったイタリアの名門ブランドをはじめ、日産スカイラインR34やポルシェなど70台以上のコレクションが出品される。そんな中、奇妙な個性を放つ6台の名車が注目を集めている。

1. 1977年式 フィアット・ベルトーネ 850T ヴィジターズバス

まるで「スヌーピー」のミステリーマシンのような外観を持つこの小型バンは、フィアット会長ジャンニ・アニェッリが新設施設への来賓輸送用に特注した車両だ。当初はフィアット600マルチプラスをベースにしていたが、後に850Tファミリアーレを6人乗りに改造したモデルへと発展。さらにベルトーネのデザイナー、マルチェロ・ガンディーニが手がけた特別仕様は、850をベースに独特のデザインを纏っている。

6つの個別シートと6つのドアを備え、パノラマルーフからの眺望を楽しめる一方で、夏場は車内が暑くなるため、デュアルエアコンが搭載されている。リアに搭載された843cc4気筒エンジンとセミオートマチック4速トランスミッションは高速走行には向かないが、これは高速道路向けに設計された車ではない。フィアットはこの特注バスを6台未満しか製造せず、現存するのは2台のみと推定されている。推定落札価格は8万~12万ユーロ(約1,050万~1,570万円)。

2. 1989年式 メルセデス・ベンツ・ボッシャート B300 Biturbo ガルウイング

1989年のフランクフルトモーターショーで発表されたこの車両は、メルセデス・ベンツ300SLガルウイングクーペの再解釈モデルだ。ベースはC124シャーシの300CEクーペで、フロントには当時発売されたばかりのR129 SLのフロントエンドが grafted(移植)され、ルーフとリアオーバーハングが短縮された。さらに電気油圧式のガルウイングドアが追加されている。

3.0リットルエンジンは2基のターボチャージャーにより283馬力に強化され、低回転域用と高回転域用の2基のターボによりターボラグを最小限に抑えている。5速マニュアルトランスミッションを搭載し、内装はボーニットメタリックとバイオレットグレーの2トーン塗装と調和した仕様となっている。

当時のメルセデス・ベンツのラインナップで最も高価なモデルの1つだったため、販売台数はわずか11台と推定され、その中でもガルウイングドアを採用したのはこの1台のみ。現在の市場価値は未公表ながら、希少性の高さから高値が期待される。

3. 1990年式 アルファロメオ SZ(スパイダー)

アルファロメオが手がけた最後のリアエンジンスポーツカーであるSZは、1990年に発表された。ザガートによるデザインは、当時のイタリアンスポーツカーの伝統を踏襲しつつ、斬新なエアロダイナミクスを取り入れている。3.0リットルV6エンジンは210馬力を発揮し、軽量な車体と相まって優れたハンドリングを実現していた。

しかし、その個性的なデザインは賛否両論を巻き起こし、当時の販売は振るわなかった。現在では、アルファロメオのコレクターズアイテムとして高い人気を誇っている。推定落札価格は15万~20万ユーロ(約2,000万~2,600万円)。

4. 1973年式 ランチア・ストラトス HF

ランチア・ストラトスは、1970年代初頭にラリー競技用に開発されたモデルだ。ベルトーネによる斬新なデザインと、フェラーリ製の2.4リットルV6エンジンを搭載し、ラリーの世界で圧倒的な強さを誇った。1974年から1975年にかけて、ストラトスはラリー選手権で2年連続優勝を果たしている。

しかし、その実用性の低さから市販車としての販売は限定的だった。現在では、ラリーの歴史を象徴する名車として、コレクターの間で高い評価を受けている。推定落札価格は30万~50万ユーロ(約4,000万~6,600万円)。

5. 1995年式 ピニンファリーナ・エシエンツァ(フェラーリ F50ベース)

フェラーリF50をベースにピニンファリーナが手がけたこの1台は、フェラーリの創立50周年を記念して製作された特別モデルだ。F50のシャーシとエンジンを流用しつつ、ピニンファリーナ独自のデザインが施されている。その流麗なボディラインと、F1テクノロジーを取り入れたエンジンは、フェラーリの技術力の粋を集めた逸品となっている。

世界に3台しか存在しないとされるこのモデルは、フェラーリのコレクションの中でも最も希少な1台だ。推定落札価格は200万~300万ユーロ(約2億6,000万~4億円)。

6. 1986年式 ブガッティ EB110 スーパースポーツ

ブガッティEB110は、1980年代後半にロマーノ・アルティオーリによって復活したブガッティブランドの象徴的なモデルだ。4基のターボチャージャーを搭載した3.5リットルV12エンジンは560馬力を発揮し、0-100km/h加速3.2秒という驚異的な性能を誇っていた。

しかし、その高い開発コストと販売不振により、ブガッティ社は1995年に経営破綻に追い込まれた。現在では、ブガッティの歴史を象徴する名車として、コレクターの間で非常に高い人気を誇っている。推定落札価格は100万~150万ユーロ(約1億3,000万~2億円)。

ヴィラ・デステオークションでは、これらの奇妙で個性的な名車たちが一堂に会する。コレクターや愛好家にとって、見逃すことのできないイベントとなるだろう。

出典: Hagerty