スマホを超音波装置に変換、自宅で胎児心拍を計測

米ジョージア工科大学の研究チームが開発した新しいモバイルアプリ「DopFone」が、妊婦の自宅における胎児心拍のモニタリングを可能にする。従来の医療機関への通院に不安を感じる妊婦にとって、大きな支援となる技術だ。

妊婦の5人に1人が経験する周産期不安

米国の研究によると、妊婦の20%が周産期不安を経験している。これは、妊娠に関する強い不安や否定的な思考に悩まされる状態を指す。DopFoneは、定期的な健診の間に生じる不安を軽減する目的で開発された。

スマホのスピーカーで超音波を活用

DopFoneは、スマートフォンのスピーカーから低周波の超音波を発信し、腹部の振動を検知して胎児の心拍を計測する。この技術により、専門的な医療機器がなくても、自宅で簡単に胎児の状態を確認できる。

研究者の個人的な経験が技術開発のきっかけに

ジョージア工科大学のアレクサンダー・アダムス准教授は、自身の妻が流産を経験した際、標準的な胎児ドップラー装置では心拍の正確な計測が困難だったことに着目。この経験が、DopFone開発の原動力となった。

「病院やクリニックには優れた医療機器が揃っていますが、それ以外の場所、特にハイリスク妊娠の場合でも十分な機器がありません。DopFoneは、健診の間のギャップを埋める技術です」
— アレクサンダー・アダムス准教授

臨床試験で高い精度を実証

DopFoneの共同開発者であるプージータ・ガルグさん(現在はワシントン大学で博士課程在籍)は、ジョージア工科大学在学中にこのプロジェクトに参加。現在は同大学医学部と協力し、初めての臨床試験を実施中だ。

試験では23人の患者を対象に検証され、心拍計測の誤差は±4.9拍/分という結果に。臨床基準の許容範囲である±8拍/分を大幅に下回る精度を達成した。アダムス准教授によると、多くの場合、誤差は2拍/分以内で、誤認率は1%未満という。

流産リスクの予防につながる可能性

米イェール大学医学部の研究によると、米国では年間100万件の妊娠が流産に至っている。しかし、その多くは報告されていない可能性が高い。アダムス准教授は、DopFoneによる継続的な心拍データの収集が、流産の原因解明や予防につながる可能性を指摘する。

「この技術によって、流産に至る前の兆候を捉え、予防策を講じることができるかもしれません。何よりも、不安を抱える妊婦に安心感を与えることができます」
— アレクサンダー・アダムス准教授

医療アクセスが限られた地域への普及に期待

DopFoneは、従来の携帯型胎児心拍モニターよりも低コストで導入できるため、医療アクセスが制限された地域でも活用が期待される。ガルグさんは、特に「マタニティデザート(医療機関までの距離が遠い地域)」と呼ばれる地域での有用性を強調する。

「出産時に長距離の移動を余儀なくされる妊婦にとって、この技術は非常に有効です。世界の発展途上地域でも活用できる可能性があります」
— プージータ・ガルグさん

今後の展望と課題

研究チームは、外部デバイスやアタッチメントを必要としないシンプルな設計を重視。今後は、さらなる臨床試験を重ね、実用化に向けた取り組みを進める予定だ。