米ロサンゼルスの東6丁目。2025年6月、砂漠迷彩の装備を着た州兵が無標章のバンから降り、住宅街の道路を封鎖した。近隣の小学校へ続く道も遮断された。その直後、連邦捜査官らが突入し、催涙弾を投げ込みながら一軒の家に押し入った。

対象となったのは、アレハンドロ・オレジャナ(30歳)。海兵隊員でUPS勤務のベテランだったオレジャナは、トランプ政権の移民強制執行に抗議するデモ隊に水や食料、フェイスシールドを配布する様子が映像で確認されていた。しかし当局は、彼を「秘密の反乱組織の主要メンバー」と断定し、逮捕に踏み切った。

現場にはFOXニュースのカメラが同行。逮捕の模様は生中継された。ブルーのFBIベストを着た検察官、ビル・エッセイリは「計画的で資金力もある組織的な動きだ。今日が最初の重要な逮捕の1つだ」と宣言した。オレジャナは連邦法「共謀罪」と「治安妨害幇助」で起訴されたが、わずか数週間で捜査官が自宅から得た証拠は「決定的なものではなかった」と判断。他の容疑者も見つからず、7月下旬には起訴取り下げに追い込まれた。

「テロリスト」とされた活動家たち

トランプ政権は過去10カ月間、米国各都市で移民強制執行を強化。不法滞在者の摘発と並行して、反対運動に参加した市民や傍観者、場合によっては家族までも「国内テロリスト」や「過激派」と断定し、逮捕を進めてきた。プロPublicaとFRONTLINEの調査によると、これまでに300人以上の米国市民が逮捕されたが、その多くのケースで起訴は崩壊している実態が明らかになった。

証拠映像が覆す警察の主張

報道陣はソーシャルメディア、裁判記録、報道を精査。その中で、連邦捜査官に暴行や妨害の罪で起訴された300人以上のケースを分析した。その結果、逮捕時の捜査官の供述がビデオ映像によって繰り返し否定される事例が頻発。3分の1以上のケースで、検察は早期に起訴を取り下げざるを得なかった。

例えば、ジョージア州アトランタでは、移民取り締まりに抗議する市民が「暴力行為」で逮捕されたが、防犯カメラの映像からはむしろ警察側の挑発行為が確認された。テキサス州ヒューストンでも同様のケースがあり、検察は最終的に全ての容疑を否認せざるを得なかった。

司法の実態に疑問符

専門家らは、連邦政府が「治安維持」を名目に市民の表現の自由を抑圧しようとしているのではないかと指摘する。公民権団体「ACLU」の弁護士は「政府はデモ参加者をテロリストとレッテル貼りし、恣意的な逮捕を正当化しようとしている。しかし実際の証拠は乏しく、多くのケースが法廷で崩壊している」と述べた。

一方で政府側は「法の支配に基づく正当な執行だ」と主張。エッセイリ検察官は「我々は法に基づき、公共の安全を守るために行動した」とコメントした。しかし、オレジャナのケースに象徴されるように、その「正当性」には大きな疑問が投げかけられている。

出典: ProPublica