米国ユタ州の州議会議員レイモンド・ウォード氏は、ニューヨーク・タイムズ紙で欧州における新たなエネルギー動向についての記事を読み、家庭用の安価で持ち運び可能な太陽光発電システム導入のアイデアを着想した。

「バルコニー太陽光」とも呼ばれるプラグイン型太陽光パネルは、標準的なコンセントに直接接続して発電することで、高額な屋根設置型システムを必要とせずに電気代を削減できる技術だ。欧州では比較的安価なこの技術が急速に普及しており、ウォード氏が提案した法案により、米国でも注目を集めるようになった。

ユタ州が全米に先駆けて法整備

昨年、ユタ州議会は超党派の支持を得て、HB 340法案を全会一致で可決。州内の住宅用コンセントに直接太陽光システムを接続することを認める全米初の州となった。同法案の成立を受け、ウォード氏は「3万ドルもの費用をかけずに、少しでも太陽光発電を利用したい人にとって素晴らしい選択肢だ」と語った。

ウォード氏がバルコニー太陽光について知ったきっかけは、ドイツでの普及状況だった。同国ではバルコニー用太陽光パネルが数か月で送電網の太陽光発電容量を10%向上させたとニューヨーク・タイムズ紙が報じており、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー供給が逼迫する中、その重要性が高まっていた。

全米30州以上で類似法案が検討中

HB 340の成立後、米国では30州以上とワシントンD.C.で同様の法案が検討されており、その動きは加速している。カリフォルニア州の非営利団体「Bright Saver」の共同設立者であるコラ・ストライカー氏は「ユタ州、ありがとうございます。これは常識的で誰もが納得する取り組みであり、全米に広がっていくでしょう」と語った。

先月にはメイン州知事が同様の法案に署名し、バージニア州では知事の机上で署名を待つ法案が存在する。コロラド州とメリーランド州では州議会の両院で承認済み、ハワイ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、オクラホマ、バーモントの各州ではいずれかの議院で可決されている。

普及に向けた課題と安全性の確保

こうした法整備の進展にもかかわらず、米国の住民がバルコニー太陽光パネルを大手家電量販店で購入することはまだできない。その理由は、パネルの安全性や電力網への影響を考慮した規制が整備されていないためだ。

従来の家庭用電力網は、電力を送電網から家庭に引き込む設計となっている。しかしバルコニー太陽光は、発電した電力を逆にコンセントに流し、家庭内の配線を通じて「上流」に送電する仕組みだ。ウォード氏は「電力会社は一般的に、他者による発電を望まない傾向にある」と指摘する。

また、電力会社は安全面への懸念も示している。例えば、電力線の修理作業中に、コンセントに接続された太陽光パネルが電力を供給し続けていれば、作業員が感電する危険性があるという。ウォード氏はこうした問題について「欧州と米国では電気の性質に違いはなく、物理法則は同じ。安全性も実証されている」と反論する。

「バルコニー太陽光が普及すれば、家庭の電力自給率向上に貢献するだけでなく、エネルギーの地産地消を推進することにもつながる。今後、規制の整備が進み、より多くの人が手軽に導入できるようになることを期待したい」とウォード氏は語った。

出典: Grist