米国政府が中国による米国のAI研究所からの知的財産(IP)窃取を「産業規模」と非難し、規制強化に向けた動きを加速させている。英国フィナンシャル・タイムズ(FT)が14日に報じた。
中国のAIスタートアップ「DeepSeek」が、米OpenAIのモデル出力を利用して訓練されたとの疑惑が浮上したことを皮切りに、グローバルなAI企業間で「蒸留(distillation)」と呼ばれる手法を悪用したIP窃取が横行しているとの指摘が相次いでいる。
1月にはGoogleが、中国を含む「商業目的の行為者」が自社のGemini AIチャットボットを模倣するため、10万回以上のプロモーションを展開し、安価なコピーモデルの訓練に利用したと発表。翌月にはAnthropicが、中国のDeepSeek、Moonshot、MiniMaxの3社が「Claude」との不正な対話を通じて1600万回以上の交換を記録し、技術を模倣したと非難した。また2月にはOpenAIも、検知した攻撃の大半が中国発であると確認している。
米国の警戒感が高まる
米国政府は、こうした「蒸留攻撃」が中国によるAI分野でのキャッチアップを加速させる脅威と捉えている。ホワイトハウス科学技術政策局のマイケル・クラツィオス局長がFTに提供したメモによると、米政府は「中国を中心とする外国勢力が、米国の先端AIシステムを意図的に産業規模で蒸留しようとしている」との情報を把握していると指摘。技術流出防止のための規制強化が急務だとの認識を示した。
中国側の反応
これに対し中国外務省の報道官は、米国の主張を「根拠のない中傷」と一蹴。技術開発は中国の自主的な取り組みであり、知的財産の保護に関しても国際的なルールを遵守していると主張した。
専門家の見解
AIセキュリティの専門家らは、蒸留攻撃がAI業界全体の信頼を揺るがす重大な問題だと指摘。米国のシンクタンク「Center for Security and Emerging Technology(CSET)」のマイケル・クラッツ研究員は、「蒸留は合法的な技術だが、悪用されればAIモデルの品質低下や知的財産の流出につながる」と警告する。一方で、規制強化が技術革新を阻害する可能性にも言及し、「バランスの取れた対応が必要」と訴えた。
今後の展開
米国政府は今後、中国企業に対する技術輸出規制の強化や、AIモデルの透明性向上を求める方針。中国側も報復措置を検討する可能性があり、米中間のAI技術を巡る対立が激化する見通しだ。