病院食改革の波紋
米国の病院食は、かつてから「まずい」との評判が定着している。しかし、トランプ政権下の保健社会福祉省(HHS)が、病院に対し不健康な食品の廃止を求める動きを強化したことで、新たな議論が巻き起こっている。同省は2025年から2030年にかけての栄養ガイドラインに基づき、病院の食品調達を規制する方針を示した。メディケア・メディケイドの支払い資格を維持するためには、このガイドラインへの準拠が条件となる。
HHSのスポークスパーソン、アンドリュー・ニクソン氏は「多くの病院が食事改善に取り組んでいることを評価する。すべての病院システムに同様の取り組みを期待する」とコメントした。
「病院スナitchライン」設置に批判集中
HHSのロバート・F・ケネディ・ジュニア長官顧問であるカリー・ミーンス氏はソーシャルメディアでこの取り組みを説明し、ガイドラインに従わない病院を一般市民に報告するよう呼びかけた。同氏はHHSのウェブページに、医療費に関する苦情受付と同じ電話番号を掲載し、違反報告を促した。
この動きに対し、専門家や市民から強い反発が起きている。主な批判は、患者の個別ニーズを無視した画一的な食事制限にある。睡眠医学専門医のメアリー・テイラー・ボーデン氏は、自身も「米国を健康にする運動(Make America Healthy Again)」を支持する立場ながら、この政策には反対の意を表明。X(旧Twitter)に「病院で体重を減らすことは死亡リスクを高める。カルリー、やめてくれ。病院のスナッチラインでソーダを報告するのか?」と投稿した。
「これは少し独裁的だ」
メアリー・テイラー・ボーデン氏
法的根拠の不備と病院のジレンマ
HHSは、医療基準や安全基準の違反があった場合、連邦資金の支払い停止や脅迫を行う権限を有している。しかし、同省が示す食事に関する基準は、米農務省が定める2025-30年の栄養ガイドラインとは明確に異なる内容となっている。
HHSの基準では、病院に対し「患者の栄養ニーズを認められた食事療法に基づいて満たすこと」を求めている。また、資格を有する栄養士の配置なども義務付けられているが、具体的な食品内容までは規定していない。
ミシガン大学のニコラス・バグリー法学教授は「ロバート・F・ケネディ・ジュニア長官には法的根拠がない。しかし、病院や介護施設は、今後の執行措置の可能性を考慮し、無視するわけにはいかない状況に置かれている」と指摘する。
病院食改革の行方
トランプ政権による「健康な食事」推進策は、病院や介護施設に対し、甘味飲料や栄養補助食品の制限を求める内容となっている。HHSはこれを「本物の食事(real food)」の提供と位置付けているが、患者の状態や嗜好に応じた柔軟な対応が求められる現場では、一律の基準が機能しない可能性が指摘されている。
今後、病院側がどのように対応するのか、またHHSがどのような執行措置を取るのか注目が集まる。