米国オハイオ州南部地区連邦地方裁判所のマシュー・マクファーランド判事は12日、同州リトルマイアミ学区の教師が起こした訴訟で、原告の匿名性を認めない判断を下した。

原告の教師は過去4年間、教室に「ヘイトはここに居場所なし」と書かれた旗を掲げてきた。この旗にはレインボープライドフラッグやトランスジェンダープライドフラッグなど複数の象徴的なマークが描かれていた。

法改正と学校区の対応

2025年1月にオハイオ州議会は「H.B. 8(オハイオ州親の権利法案)」を可決。同法は、学校で「性的概念やジェンダーイデオロギーに関する口頭・文書・画像・説明」を扱う教材について、保護者が閲覧できる権利を定めている。同年10月、リトルマイアミ学区の教育委員会はこの法案に基づく方針を採択した。

2026年2月、学区の教育委員長が教師に旗の撤去を要請。しかし校長は撤去命令を出さなかった。教師はその後、旗を擁護するメールを作成し、学区のスーパーインテンデント(教育長)もこれを支持した。

同年2月25日、教育委員会は4対1の賛成多数で旗の撤去を決定。H.B. 8と学区方針に基づく判断だった。教師はこの決定に従い、旗を撤去した。

憲法違反主張と匿名性の是非

教師はその後、旗の撤去が自身の表現の自由(憲法修正第1条)を侵害したとして、学区を提訴。しかし裁判所は、原告が匿名で訴訟を進めることを認めなかった。

連邦民事訴訟規則(Fed. R. Civ. P. 10(a))によれば、訴状には全ての当事者を明記しなければならない。匿名は原則として認められないが、プライバシーの利益が公開の原則を上回る場合に限り例外的に認められる。

原告側は、自身の身元を明かせば「コミュニティ内でのさらなる反応を招き、嫌がらせや脅迫のリスクが高まる」と主張。既に個人情報が無断でオンラインで公開(ドクシング)されており、これは嫌がらせの一形態だと述べた。

しかし被告側は、原告の主張こそが匿名の主張を弱めると反論。原告自身が、自身の個人情報が「公的記録請求に基づき既に公開されている」と認めていると指摘した。裁判所はこれを踏まえ、原告の身元は既に公表済みであり、匿名であっても情報の公開を防げないと結論付けた。

さらに裁判所は、原告が自身の名前、職名、写真が既に公開されている事実を示しただけで、具体的な嫌がらせや危険性を証明できていないと指摘。匿名であっても公の議論から身元を隠すことはできず、むしろ既に公開された情報が議論の対象となっていると判断した。

出典: Reason