連邦裁判所が制裁凍結を命令

米国政府は近年、経済制裁を活用して政府の意に沿わない発言を封じる手法を模索してきた。2021年にはバイデン政権下で、イラン政府系とされるニュースサイトのウェブサイトを差し押さえ、2025年にはトランプ政権が、イスラエル・パレスチナ紛争に関与する企業の処罰を提言した国連人権特別報告者フランチェスカ・アルバネーゼ氏を制裁対象とした。

これに対し、アルバネーゼ氏の家族は「言論の自由を侵害する」として米政府を提訴。米連邦地裁のリチャード・レオン判事は11月、財務省に対しアルバネーゼ氏への制裁の執行を差し止める判決を下した。判決文では「アルバネーゼ氏は単なる意見表明を行ったに過ぎず、その発言に拘束力はない」と指摘し、制裁が「第一修正条項(言論の自由)違反に当たる可能性が高い」と結論づけた。

制裁の実態と影響

アルバネーゼ氏は、イスラエル・パレスチナ紛争に関与する企業幹部の処罰を国際刑事裁判所(ICC)に促す報告書を発表した。しかし、国連の特別報告者は無給の外部研究者であり、実質的な権限はない。米政府は「行動規制」を名目に制裁を正当化したが、レオン判事は「意見表明に対する制裁は不当」と否定した。

制裁の影響は深刻で、アルバネーゼ氏のワシントンの自宅は差し押さえられ、夫の世界銀行エコノミストであるマスシミリアーノ・カリ氏と共有する銀行口座や保険も凍結された。さらに、ジョージタウン大学は「連邦法により制裁対象者との関係を禁止されている」として、彼女の大学メールアカウントを停止した。

イタリア出身のアルバネーゼ氏は、米国外でも制裁の影響を受け、ホテルの予約拒否や海外銀行での支払い処理拒否に直面した。これらはすべて、米財務省の制裁が及ぶことを恐れた第三者機関による対応だった。

政府の主張と判決の意義

米政府側は「制裁は行動規制であり、言論の自由とは無関係」と主張したが、判決では「アルバネーゼ氏の行為は単なるメッセージの伝達に過ぎない」と退けられた。判事は、国務長官マルコ・ルビオ氏による「反ユダヤ主義やテロ支援容認」といった非難が、制裁の目的が「単なる発言の処罰」であることを示す証拠だと指摘した。

アルバネーゼ氏の弁護団は、この他にも第四修正条項(適正手続きの侵害)や第五修正条項(家族関係の刑事化)の違反も主張していたが、判決ではこれらについては言及されなかった。判事は、第一修正条項の侵害の可能性が高いと判断したことで、制裁の執行を差し止めた。

制裁の法的根拠

アルバネーゼ氏とカリ氏は、2024年に発令された大統領令14203に基づく制裁を受けた。同政令は、イスラエル・米国軍のICCによる捜査に協力する行為を禁止するものだが、アルバネーゼ氏の報告書は「企業幹部の処罰を促す」という意見表明にすぎない。判決は、政令の適用が「言論の自由を侵害する可能性が高い」と結論づけた。

出典: Reason