米国最高裁判所は6月13日、中絶薬ミフェプリストンの郵送処方を禁止する連邦控訴裁判所の命令を一時停止する緊急命令を発令した。これにより、中絶が事実上禁止されている州でも、テレヘルスを通じた処方と郵送が当面の間、可能となる見通しとなった。
この判断は、中絶アクセスをめぐる全国的な混乱を回避するもので、特に中絶薬による中絶が全米の6割以上を占め、そのうち約3割がテレヘルス経由で行われている現状を踏まえたものだ。
背景:中絶薬規制を巡る攻防
2022年の「ドブス判決」でロー対ウェイドを覆し、中絶規制を州に委ねた米最高裁。その後、ルイジアナ州など保守的な州は相次いで中絶を事実上禁止する法律を制定したが、その一方で、中絶薬の利用は増加。特にミフェプリストンは、2023年のFDA規制緩和により、対面処方の義務が廃止され、テレヘルスや郵送が可能となった。
これに対し、ルイジアナ州は昨年、FDAの規制緩和を「科学的根拠に乏しく、民主党の政治的意図に基づく」と主張し、連邦控訴裁判所に中止を求める訴訟を起こした。同裁判所は5月1日、FDAの規制を一時停止する命令を下したが、最高裁はこれを差し止める判断を示した。
保守派判事の反発と「コムストック法」の再燃
最高裁の緊急命令に対し、保守派のサミュエル・アリート判事とクラレンス・トーマス判事は反対意見を表明。アリート判事は、他の判事の判断を「理不尽で驚くべきもの」と批判し、青い州の「シールド法」(中絶規制州の患者にテレヘルスで処方する医師を保護する法律)を「ドブス判決を無効化する策謀」と非難した。
トーマス判事はさらに、1873年の「コムストック法」に言及し、同法が「郵便で中絶薬を送付する行為を禁じている」と主張。ミフェプリストンの製造業者であるダンコ・ラボラトリーズとジェンバイオプロ社を「犯罪組織」に例え、同社が提起した控訴を却下すべきだと訴えた。
「たとえ保守的な最高裁であっても、女性から必要な医療を奪う極端な試みを容認することはできない」
— 反対意見を表明したリベラル派判事らの見解
今後の展望:中絶アクセスの行方
最高裁の判断は当面の凍結にとどまり、今後も中絶薬をめぐる法廷闘争は続く見通し。特にコムストック法の解釈を巡っては、中絶反対派と擁護派の激しい攻防が予想される。一方で、中絶薬の利用拡大が続く中、州をまたいだテレヘルス処方の是非が、今後の米国の医療政策に与える影響は計り知れない。