憲法学の教科書改訂作業を進める中で、最高裁判決が実務に与える影響の乖離を改めて実感している。2021年に前回版を刊行して以来、憲法判例は大きく変化したが、その実態は教室で教える内容と現場の実務とでは大きな隔たりがある。

例えば、2022年の「ブリュエン判決」は銃規制法の審査基準を厳格化したが、その直後「ラヒミ事件」では基準の修正が行われ、銃規制法の実質的な変更はほとんど見られていない。ブルー・ステーツでは依然として厳しい携帯許可条件が維持され、第二修正の適用範囲に関する議論も進展していない。

同様に「ドブス判決」で abortion 問題は州の判断に委ねられたが、医師による薬剤配布を阻止できない状況が続いている。レッド・ステーツでは abortion 件数がむしろ増加し、ブルー・ステーツでは shield law(保護法)が制定されるなど、実務の現場では法の抜け穴が活用されている。

また「SFFA 判決」で affirmative action は事実上廃止されたが、エリート大学の入学率に大きな変化は見られない。ハーバード大学などは「黒人学生ゼロ」のシナリオを危惧したが、実際のデータはそうした懸念を裏付けていない。マンハッタン研究所の報告によると、少数人種の入学率はほぼ横ばいのままである。

最高裁は今期、銃規制や affirmative action に関する重要な案件を棄却し続けており、実務家の間では「最高裁はこれらの問題に関与したがらない」との見方が広がっている。本日も mifepristone 関連の案件で最高裁は再び判断を先送りした。実務と教科書の間に横たわるギャップは、今後も憲法教育の課題であり続けるだろう。

出典: Reason