独立宣言250周年記念講演で明かされた信念

2024年4月15日、米国テキサス大学オースティン校で開催された独立宣言250周年記念講演に、クラレンス・トーマス連邦最高裁判事が登壇した。同判事は、独立宣言第二項の「自明の真理」に込められたメッセージについて、自身の幼少期からの体験を交えながら語った。

「自明の真理」の普遍的な理解

独立宣言は「すべての人間は平等に創られ、造物主によって一定の譲ることのできない権利を与えられている」と謳う。トーマス判事はこれを「疑う余地のない真理」と位置付け、自身の育ったジョージア州ピンポイントの黒人コミュニティで共有されていた信念を紹介した。

同コミュニティでは、教育水準にかかわらず、人種差別の法や慣習が存在する中でも、神の前では全ての人間が平等であるという信念が共有されていたという。トーマス判事は「私たちの権利は政府から与えられたものではなく、神から与えられたものだ」と当時の人々の声を代弁した。

神学的基盤と憲法の関係

「自明の真理」の根拠について、トーマス判事は二つの可能性を示した。一つは神から与えられたもの、もう一つは自然法に基づく世界的な原理だ。いずれにせよ、これらは人間の権力によって変えることのできない絶対的な真理と位置付けられた。

同判事は「私たちの祖父は文字の読めない男だったが、権利と義務は神から来るもので、差別の構造からではないと語っていた」と回想。当時の黒人コミュニティが、政府の不正な扱いを受けながらも、神の前の平等という信念によって尊厳を保っていた実態を明かした。

差別と闘う原動力となった信念

トーマス判事は、当時の黒人コミュニティが「生命、自由、財産」の不可侵性を信じていたと強調。これらの原則は、教育の有無に関わらず、世代を超えて受け継がれた「揺るぎない真理」であったと語った。

同判事は「差別の現実に直面しながらも、彼らは神の前の平等という信念によって、侮辱に耐える dignity を保っていた」と述べた。この信念こそが、差別と闘う原動力となったと振り返った。

知的エリートによる原則の歪曲を批判

トーマス判事は、独立宣言の原則がしばしば「難解な哲学論争の対象」とされ、その本質が見失われている現状を嘆いた。同判事は「知識人たちは、これらの原則を学術的な遊びに変え、精神を奪い去っている」と指摘した。

同判事は「これらの真理は単純で、誰にとっても理解できるものだ。しかし、あまりにも多くの人々が、それを複雑化し、人々を眠りに誘う議論に変えてしまっている」と語った。

歴史的証言が示す普遍的メッセージ

トーマス判事の講演は、独立宣言の原則が単なる歴史的文書ではなく、人類普遍の価値観であることを改めて示した。同判事は「これらの真理は、時代や環境を超えて、人々の心に根付いてきた」と述べた。

同講演の内容は、米国の建国理念が単なる理想ではなく、実践を通じて育まれてきた信念であることを浮き彫りにした。トーマス判事は、この信念こそが米国の強さの源泉であると強調した。

出典: Reason