米大手暗号資産取引所のコインベースは2025年6月、AI(人工知能)を活用した事業再編を発表し、全世界の従業員の約14%にあたる700人を削減する方針を明らかにした。これにより、同社の株価は発表直後の取引で4%上昇した。
CEOのブライアン・アームストロング氏は従業員向けのメールで、市場の低迷とAIの進化を理由に挙げ、リストラの必要性を説明した。同社の2025年12月31日現在の従業員数は4,951人であり、14%の削減は693人に相当する。
AI活用による業務効率化を推進
アームストロング氏はメールで「過去1年間で、エンジニアがAIを活用することで、かつてチームが数週間かかっていた作業を数日で完了できるようになった」と述べ、AIが業務効率化に貢献している実態を示した。また、非技術系のチームでも生産コードのリリースが可能になり、多くのワークフローが自動化されていると説明した。
同氏は「コインベースを人間が支援するAI主導の企業に再構築する」と述べ、今後の方向性を示した。具体的には、CEO直下の管理階層を5層以内に抑え、リーダーの直属の部下を最大15人に制限するとともに、「AIネイティブな小規模チーム」の導入を進める方針だ。このチームでは、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーの役割を1人が兼任することで、迅速な意思決定と実行を可能にする。
アームストロング氏は「今後は、高い文脈理解を持つ小規模で俊敏なチームが主流となる」と強調した。
過去のリストラと暗号資産市場の関係
コインベースは2012年の設立以来、暗号資産市場の景気循環に合わせて度々リストラを実施してきた。特に今回のリストラは、暗号資産市場の低迷が背景にある。ビットコインは2025年10月のピーク(12万6,000ドル)から35%下落しており、一方で米株式市場は4月に史上最高値を更新するなど、景気の二極化が進んでいる。
アームストロング氏は「早期かつ意図的に調整を行い、コインベースをスリム化し再建する」と述べ、リストラの目的を明確にした。
リストラ費用と投資家の反応
コインベースはリストラに伴い、5,000万ドルから6,000万ドル(約75億~90億円)の再編費用が発生すると見込んでおり、その大部分は第2四半期に計上される見通しだ。株式市場は発表直後から好反応を示し、投資家は今回のリストラを「長年の遅れを取り戻す好機」と捉えているとみられる。
同社はメタ(旧フェイスブック)やマイクロソフトなど、他のハイテク企業と同様に、AI活用を軸とした業務効率化とリストラを進める方針だ。
「AIの進化は不可逆的な変化をもたらす。コインベースはこの流れに乗り、より柔軟で効率的な組織へと生まれ変わる」
— ブライアン・アームストロング(コインベースCEO)
なお、コインベースは2025年4月にも1,100人規模のリストラを発表しており、今回の再編はその延長線上にあるとみられる。