ビットコインの創始者とされる謎の人物「サトシ・ナカモト」の正体について、新たなドキュメンタリーが注目を集めている。「Finding Satoshi」は、4年に及ぶ徹底的な調査と多数のインタビューを経て、サトシ・ナカモトが実在の2人、ハル・フィニーとレーン・ササマン(いずれも故人)であった可能性を示唆している。
ドキュメンタリーの調査内容
同作品は、ニューヨーク・タイムズベストセラー作家のウィリアム・コーハンとプライベート・インベスティゲーターのタイラー・マロニーが、サイファーパンクと呼ばれる暗号技術の先駆者たちに焦点を当てた調査を追っている。具体的には、アダム・バック、ニック・サボ、ハル・フィニー、レーン・ササマン、ポール・ル・ルー、ウェイ・ダイの6人が候補として挙げられた。
調査では、データサイエンティストのアリッサ・ブラックバーン(ベイラー医科大学)が、サトシのデジタル活動のリズムを分析。投稿時間、マイニング活動、沈黙期間などを基に、フィニーとササマンの2人だけがサトシの特徴に合致すると結論付けた。バック、サボ、ダイの3人は、分析結果からは除外されたという。
ササマンとフィニーの関与
レーン・ササマンは、これまでにもサトシ・ナカモトの有力候補として取り沙汰されてきた。2024年に放送されたHBOのドキュメンタリー「Money Electric: The Bitcoin Mystery」でも、ササマンがサトシであるとの賭けがポリーマーケットで行われていた。しかし、ササマンの妻であるメレディス・パターソンは、夫がビットコインの創始者ではないと否定している。
一方で、ハル・フィニーは、サトシから最初のビットコインを受け取った人物として知られる。また、2004年には「Reusable Proof of Work(RPOW)」と呼ばれるビットコインの前身技術を開発していたが、驚くべきことに、その業績はビットコインのホワイトペーパーには引用されていない。ドキュメンタリーでは、フィニーがビットコインのコードを執筆した可能性が高いと指摘されている。
専門家の見解
フィニーの元上司であるウィル・プライスは、フィニーがC++(ビットコインのプログラミング言語)に精通していたと証言。プライスは「ハルのようなエンジニアであれば、C++を使いこなせないはずがない」と述べている。
また、データ分析の専門家であるブラックバーンは、サトシの活動パターンがフィニーとササマンの2人に一致すると主張。特に、サトシが2010年以降に活動を停止した点について、ササマンが2011年に死去したこととの関連性を指摘している。
これまでのサトシ説との比較
サトシ・ナカモトの正体については、これまでにも様々な説が提唱されてきた。例えば、アダム・バックがサトシであるとの主張をニューヨーク・タイムズのジョン・キャリー・ルー記者が報じたが、バック自身はこれを否定している。また、HBOの「Money Electric」では、ピーター・トッドがサトシであるとの説が示されたが、トッドもこれを否定している。
「Finding Satoshi」は、これまでの「証拠を突きつける」といった手法ではなく、長年にわたるデータや証言を基に、サトシの正体に迫る点で、これまでで最も説得力のある説であると評価されている。
今後の展望
ドキュメンタリーの公開後、ビットコインのコミュニティでは、サトシの正体についての議論が再燃している。しかし、決定的な証拠は未だ見つかっておらず、真実は依然として謎に包まれたままである。今後、さらなる調査や技術的分析が進むことで、サトシ・ナカモトの正体が明らかになる可能性もある。