ポルシェミュージアムで「忘れられた英雄」にスポットライト

ドイツ・シュトゥットガルトにあるポルシェミュージアムで、かつて「裏方」と呼ばれた前輪駆動クーペモデル「924」「944」「968」「928」に光を当てた特別展示「Forever Young. Celebrating Transaxle」が5月14日に開幕した。同展示は、1976年から1995年にかけて同シリーズが販売された40万台以上の歴史を振り返りながら、1980年代のカルチャーやモータースポーツ、技術革新を紹介する斬新な内容となっている。

トランスアクスル方式の革新性に迫る

展示の核となる「トランスアクスル方式」は、エンジンを前部、トランスミッションを後輪に配置する独特のレイアウトだ。この方式は、重量バランスの向上とハンドリング精度の向上を実現しつつ、日常使いのしやすさを維持した。その原型は1960年代のフェラーリ「275 GTB」に見られるが、ポルシェはこれを量産車に採用し、新たなスポーツカーの可能性を開拓した。

ポルシェの「裏方」たちの歴史

展示の始まりは1976年、フォルクスワーゲンが共同開発していたスポーツカー計画を放棄したことに遡る。ポルシェはこのプロジェクトを引き継ぎ、前輪駆動のスポーツカー「924」として結実させた。その後、924をベースに928(V8エンジン搭載のグランツーリスモ)、944(924のボディに2.5Lエンジンを搭載)、そして968(944の後継モデル)と、一大ファミリーを形成するに至った。

なかでも944は、16万台以上を販売する大ヒットモデルとなり、日本のクーペに乗る層にも支持された。また928は、1978年に「欧州カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、ポルシェの技術力の高さを象徴する存在となった。

1980年代カルチャーとモータースポーツの融合

展示は、1980年代のネオンサインやグラフィティアート、スケッチアーティストによるライブドローイングなど、当時のカルチャーを再現した空間で構成されている。また、レースカーの展示も行われており、ル・マンで活躍した「924 GTP」や、ラリードライバーのヴァルター・レールがドライブしたラリーカーも紹介される。

「この展示は、ポルシェの技術革新と1980年代の時代精神を融合させたものです。前輪駆動モデルがいかに重要な役割を果たしてきたか、改めて知っていただければと思います」
— ポルシェミュージアム関係者

展示の見どころと今後の展開

初回展示は2026年6月7日まで開催され、その後も期間限定のポップアップ展示やテーマ別のイベントが年間を通して行われる予定だ。シュトゥットガルト在住の方はもちろん、ポルシェファンであれば、1980年代のカルチャーと技術の融合を体感できる貴重な機会となるだろう。

なお、これらのモデルの人気は近年急上昇しており、924や944は911に比べて購入しやすいうえ、維持費も抑えられることから、ポルシェ入門モデルとして注目を集めている。

ポルシェの「忘れられた英雄」たちの系譜

  • 924(1976年-1988年):フォルクスワーゲンとの共同開発から生まれた前輪駆動スポーツカー。2.0Lエンジンを搭載し、軽量で扱いやすいモデルとして人気を博した。
  • 928(1978年-1995年):V8エンジンを搭載したグランツーリスモ。1978年に「欧州カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、ポルシェの技術力を世界に示した。
  • 944(1982年-1991年):924のボディをベースに、2.5Lエンジンを搭載。16万台以上を販売し、ポルシェの大衆化に貢献した。
  • 968(1992年-1995年):944の後継モデル。最後の前輪駆動ポルシェとして、1990年代前半まで活躍した。
出典: CarScoops