連邦最高裁の判決が引き金に

米南部には、黒人議員を輩出する多数黒人選挙区が点在していた。これらの選挙区は選挙の基本原理、連邦裁判所の命令、立法上の妥協によって成立していたが、共和党が主導する州で選挙区の再編が急速に進められている。共和党は来る11月の中間選挙に向け、可能な限り多数黒人選挙区を削減し、議席獲得を優位に進めようとしている。

ルイジアナ州が先陣を切る

連邦最高裁は先週、ルイジアナ州の選挙区再編に関する判決「ルイジアナ州対カレー事件」で、多数黒人選挙区の削減を容認する判断を下した。これにより、州議会は選挙区の再編に着手し、少なくとも1つの多数黒人選挙区を廃止する方針だ。

2020年の国勢調査後にルイジアナ州議会は選挙区の再編を実施したが、連邦地区裁判所はこれに対し、投票権法(VRA)第2条に基づき、第2選挙区を黒人多数選挙区とするよう命じた。しかし、この命令を不服とした原告団(自らを「アフリカ系以外の原告」と称する)が、この選挙区再編が人種差別的な選挙区操作にあたると主張し、憲法修正第14条の平等保護条項違反を訴えた。

連邦最高裁は6対3の判決で原告団の主張を認め、VRA第2条の実効性を事実上奪う判断を示した。

選挙妨害との批判も

ルイジアナ州では既に議会選挙の期日前投票が始まっていたが、州知事ジェフ・ランドリー氏は選挙を一時中断し、選挙区再編を実施するための執行命令を発令した。これにより、4万件以上の期日前投票が無効になる可能性が生じた。

これに対し、選挙の再開を求める住民による訴訟が行われたが、裁判所による執行命令の差し止めはまだ実現していない。連邦最高裁も選挙の一時中断を支持する動きを見せ、通常であれば1カ月待つところを直ちに判決を下す異例の措置を取った。これに対し、ケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事は「法廷は判決を下すだけでなく、その実施にまで介入しようとしている」と強く批判した。

サミュエル・アリート判事(カレー事件の判決文を執筆)はジャクソン判事の反対意見に対し、自らの見解を述べた。アリート判事は、ジャクソン判事の「無批判な裁判所の判決順守」を批判し、選挙区再編の正当性を主張した。

黒人議員の議席数が大幅に減少する恐れ

エルナ・ケーガン判事は反対意見で「今日以降、これらの選挙区は存続する保証がなくなる。他州がルイジアナ州に追随すれば、少数派住民は自分たちの選んだ候補者を当選させる機会を失い、政府機関における少数派の代表性は急激に低下するだろう」と警告した。

ルイジアナ州以外でも、ジョージア州、アラバマ州、テキサス州など南部の共和党主導州で選挙区再編が進められており、黒人議員の議席数が大幅に減少することが懸念されている。

選挙妨害との指摘も

選挙区再編の急速な実施は、選挙妨害にあたるのではないかとの指摘が専門家から出ている。選挙区再編が選挙の公平性を損ない、黒人有権者の選挙参加を阻害する可能性があるためだ。また、選挙区再編が選挙の直前で行われることで、有権者が選挙区の変更に対応できないという問題も指摘されている。

今後の展望

共和党主導の州で選挙区再編が進む中、黒人議員の議席数の減少が予想される。また、選挙区再編が選挙の公平性を損なう可能性があることから、今後も法廷闘争が続くことが予想される。一方で、民主党は選挙区再編に反対する法廷闘争を強化する方針だ。

「選挙区再編は選挙の公平性を損ない、民主主義の根幹を揺るがす行為だ。黒人議員の議席数が減少すれば、多様な声を政治に反映する機会が失われる。」
—— 公民権団体代表