ビデオゲーム産業はこの10年で、 niche(隠れた)な趣味から世界最大のエンターテインメント産業へと変貌を遂げた。その一方で、映画スタジオや失敗続きのサブスクリプション型テレビ番組など、従来のエンターテインメント産業は衰退の一途をたどっている。そんな中、ビデオゲームは唯一、右肩上がりの成長を続けている。
こうした状況下で、名優アンディ・サーキスがビデオゲームを芸術と称賛し、ハリウッドのゲームに対する「偏見」に終止符を打つ発言を行った。サーキスは、『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム、『猿の惑星』のシーザー、『アンドア』のキノ・ロイドなど、数々の名演技で知られる俳優だ。最近では、ゲーム『Clair Obscur: Expedition 33』でルノワール役を演じた。
サーキスはバラエティ誌のインタビューシリーズ「Do actors know their lines?」の中で、ビデオゲームがハリウッドに追いつき、ゲームに対する「上流意識」が消えつつあると語った。サーキスは長年ビデオゲーム業界と関わりを持ち、かつて『Heavenly Sword』で演技を披露した経験もある。
「ゲームと映画、舞台、テレビの演技に違いはありません。キャラクターにアプローチし、構築する方法は全く同じです」とサーキスは語る。かつてビデオゲームはタブー視され、多くの俳優が関与を拒んできたが、現在では演劇学校卒業直後の若手俳優がビデオゲームへの出演を希望する時代になったという。https://www.youtube.com/watch?v=BnMgMr5nDaw
さらにサーキスは、多くの映画スタジオがゲームエンジンを活用して、シネマティックなシーンやアクションシーンのプレビューを制作していると指摘。監督や撮影監督が実際に撮影する前に、映像を確認できるツールとしてゲームエンジンが不可欠となっていると語った。
「これは現代の映画制作に欠かせないツールです」と述べる一方で、サーキスは「ハリウッド向けの機能に特化しすぎた結果、ゲームエンジンの本来の目的であるゲーム業界が疎かになっているのではないか」と懸念も示した。実際、現在の映画やテレビのCGIの多くは、主にUnreal Engine 5などのゲームエンジンを使用して制作されている。
サーキスはハリウッドが長年、ビデオゲームに対して上流意識を持っていたと指摘するが、今後は「没入型のストーリーテリングが進むにつれ、状況は変わっていく」と語った。ビデオゲーム産業はこの数年で急成長を遂げ、ハリウッドはその成長の一端を取り込もうと躍起になっている。その結果、ビデオゲーム業界に詳しくないハリウッドスターが、ビジネスチャンスと捉えてゲーム関連のイベントに出演するケースも増えている。莫大な利益を生むゲーム産業を前に、ハリウッドがその流れに乗ろうとするのは自然な成り行きと言えるだろう。