米国の暗号資産規制法案、上院審議で財務長官が成立を強く要請
米国の暗号資産市場を包括的に規制する法案の成立が、米ドルの基軸通貨としての地位維持と米国の金融リーダーシップ強化に不可欠であると、財務長官のスコット・ベッセント氏が4月23日の上院公聴会で証言した。
ベッセント氏は、上院歳出委員会・金融サービス・一般政府小委員会の公聴会で、2027年度予算案に関する証言を行った際に、暗号資産市場構造法案の重要性を強調した。同法案は、現在の米国議会で数か月間審議が停滞しているが、ベッセント氏は「米国が金融分野でリーダーシップを発揮するためには、銀行システムや証券市場だけでなく、デジタル資産分野でもベストプラクティスをリードする必要がある」と述べた。
暗号資産規制の必要性と米国の優位性
ベッセント氏は、暗号資産分野における米国のリーダーシップを経済安全保障上の課題と位置づけ、以下の点を指摘した。
- 米ドルの基軸通貨としての地位強化:暗号資産市場を適切に規制することで、米ドルの国際的な信頼性を維持し、暗号資産取引を国内のマネーロンダリング防止・顧客確認(AML/KYC)の枠組みに組み込む。
- 技術的優位性の確保:米国は世界の技術リーダーであり、決済システム分野でもリーダーシップを発揮すべき。ブロックチェーン技術を「決済レール」と位置づけ、その優位性を確立する。
「我々は世界の技術リーダーだ。決済分野でもリーダーとなるべきだ」
— スコット・ベッセント、米財務長官
現在の法案審議の状況
暗号資産市場構造法案の成立に向けた道のりは依然として分断されている。主な法案の動向は以下の通り。
- 下院版「CLARITY法(Digital Asset Market Clarity Act)」:
- 2025年7月に下院で294対134の賛成多数で可決。
- 同年9月に上院銀行委員会に送付されたが、審議が停滞中。
- 上院農業委員会版「Digital Commodity Intermediaries Act」:
- 2026年1月に党議拘束の12対11で可決。
- 同法案は、商品先物取引委員会(CFTC)にデジタル商品現物市場の規制権限を拡大する内容。
両院の法案を最終的に調整し、大統領の署名に至るまでには、さらなる審議と合意が必要だ。上院銀行委員会は現在、住宅関連法案に注力しており、同委員会のマークアップ(法案修正)は未だ実施されていない。
規制不確実性が招くリスク
ベッセント氏は4月8日のウォールストリート・ジャーナルへの寄稿で、規制の不確実性が暗号資産開発の海外流出を招いていると警告した。具体例として、アブダビやシンガポールなどの規制が明確な国・地域を挙げ、以下のように述べた。
「明確なルールが存在する場所に、暗号資産開発のシェアが移転しつつある」
— スコット・ベッセント、米財務長官
同氏は、米国がリーダーシップを発揮し、包括的な規制枠組みを整備することで、イノベーションの国内誘致と米ドル圏の拡大を目指す考えを示した。
今後の展望
上院銀行委員会による法案のマークアップ実施時期は未定だが、関係者はCFTCの体制整備と十分なリソース確保を優先課題としている。暗号資産市場構造法案の成立は、米国の金融システムの安定性とイノベーションの両立に向けた重要なステップとなる見通しだ。