雪上車は、雪が降る地域にとっては冬の必需品だ。しかし、雪が消える季節には garage の片隅で眠る運命にある。この問題は雪上車が誕生して以来、常につきまとってきた課題だった。そんな中、1960年代後半から1970年代初頭にかけて、ユニークな解決策が生まれた。それが、雪上車を夏用の三輪ATVに変身させる「改造キット」だった。
当時、本格的なATVが普及する前の時代、雪上車のオーナーたちは、年間を通じて車を有効活用する方法を模索していた。その結果誕生したのが、Wunder WheelsとSkat Trakという二つのブランドによる改造キットだ。これらのキットは、雪のない時期でも雪上車を走行可能な乗り物に変える画期的なアイデアだった。
Wunder Wheels:カナダ発の革新的フレーム
Wunder Wheelsは、カナダのオンタリオ州ティルソンバーグに拠点を置くForward Ideas Limitedによって1968年に設立された企業が手掛けた製品だ。同社の創業者であるAndry Balazsは、当時の新聞記事によれば「面白いものを作ってほしい」と発明家を雇ったという。その発明家こそがイギリス出身のDonald Sessionsだった。
Sessionsが考案したのは、雪上車の下に滑り込むように取り付ける鋼鉄製のフレーム。このフレームには、2つの前輪を操舵するためのステアリング機構と、1つの後輪を駆動するスプロケットが備わっていた。これにより、雪上車は三輪のATVとして機能するようになったのだ。当時のカナダでは、改造後の車両が公道を走行することも認められていたという。
Skat Trak:簡素ながらも多機能な改造キット
Skat Trakは、もともと1952年にAcricastという社名で設立された企業が開発した製品だ。同社の改造キットは、雪上車のスキー取り付け部に独立懸架式の前輪サスペンションを装着するというシンプルな構造だった。しかし、それだけにとどまらず、Skat Trakは独自のパドルタイヤも製造していた。このタイヤを装着すれば、雪上車を砂地用のレーシングカー「サンドレール」に変えることも可能だったという。
当時の資料によれば、Forward Ideas Limitedで製造されたWunder Wheelsのキットは、わずか1,751台だったとされる。そのため、現在では非常に希少な存在となっている。一方のSkat Trakは、同社の公式ウェブサイトが閉鎖されているものの、パドルタイヤは現在でも販売されているという。
時代を先取りしたユニークな発想
これらの改造キットは、単に実用的な面だけでなく、当時のマーケットのユニークな発想を垣間見せてくれる。現代のように、新しいニッチなビジネスを始める際に「アプリを開発する」という選択肢しかなかった時代に、実用的でありながらも遊び心にあふれたアイデアが次々と生まれていたのだ。こうした奇抜な発想が、アフターマーケットの成長を支えてきたと言えるだろう。
今では、これらのキットを見つけることは難しい。しかし、Facebookのグループ「Wunder Wheels/Skat Trak Registry and Help Line」では、当時の資料や所有者同士の交流が行われており、このユニークな歴史の一端に触れることができる。雪のない季節でも車を有効活用したいと考えた先人たちの知恵と工夫に、改めて注目が集まっている。