アストンマーティンといえば「DB」の名が思い浮かぶ。1950年代から続くこの伝統は、ル・マンや007シリーズを通じてブランドの核であり続けている。現在の主力はSUVが占めるものの、DBシリーズは今なおアストンマーティンのアイデンティティを象徴する存在だ。

その最新モデルが、2026年型DB12 Sである。グランツーリングカーとしての快適性と実用性を追求しながら、走りの楽しさを高めた一台だ。オンラインでの「ステータス」競争に偏ることなく、実用的な走りを重視した設計が特徴だ。

パワーアップされたV8エンジンと俊敏なレスポンス

DB12 Sの心臓部には、メルセデスAMG由来の4.0リットルV8ツインターボエンジンが搭載されている。アストンマーティンがチューニングを施したこのエンジンは、6,250rpmで690馬力を発揮。ベースモデルのDB12(671馬力)を上回るパフォーマンスを実現した。トルクは590lb-ftで、回転数2,750~6,000rpmの間で最大値を維持する。

エンジンのチューニングに加え、8速シングルクラッチZFトランスアクスルのシフトタイムが43%短縮された。これにより、0-60mph加速はメーカー公称で3.4秒を達成。ベースモデルより0.1秒速い。最高速度は両モデルともに202mph(約325km/h)に設定されている。

サスペンションとブレーキの進化

DB12 Sでは、シャーシとソフトウェアにもSモデル特有の改良が加えられた。ビルシュタインDTXダンパーのソフトウェアを再調整し、リアのスタビライザーバーを強化。さらに電子式リアデフの設定も見直された。サスペンションジオメトリー(キャスター、キャンバー、トゥ角)も最適化され、グランツーリングカーとしての快適性を保ちつつ、俊敏なレスポンスを実現している。

ブレーキシステムも刷新された。カーボンセラミックブレーキが標準装備となり、フロント16インチ、リヤ14インチのローターを採用。ベースモデルのスチールブレーキと同じサイズながら、非ばね下重量を約60ポンド(約27kg)軽減した。これにより、より高い制動性能と軽量化を両立している。

外観と内装の差別化

DB12 Sは、外観と内装にもSモデルならではの差別化が図られている。エクステリアでは、専用のデザイン要素が随所に取り入れられ、アグレッシブな印象を強めている。インテリアでは、上質な素材と洗練された仕上げが施され、グランツーリングカーとしての快適性と高級感を高めている。

アストンマーティンの伝統と革新が融合したDB12 Sは、グランツーリングカーの新たな基準を示すモデルと言えるだろう。実用性とスポーツ性を兼ね備えたこのクルマは、まさに「走る喜び」を追求した一台だ。

出典: Hagerty