スーパーヒーロー映画といえば、希望と正義を象徴する物語が多い。バットマンやパニッシャーのようなキャラクターでも、物語は最終的に救済で幕を閉じる。ハルクの咆哮やウルヴァリンの呻き声は恐ろしいが、それでも悪役は敗北し、無実の人々は救われる。しかし、DCユニバースの最新作「クレイフェイス」はその常識を覆す。
新たに公開された予告編からは、ストーリーの詳細までは明らかにされていないが、その雰囲気は明確だ。本作はホラー映画としての要素を全面に押し出した作品となる。鋭い音楽の効果音、多くの血しぶき、そして溶けるような顔の映像が、観客に強烈な恐怖を与える。
主演はトム・リース・ハリス。彼はマット・ヘイゲン役を演じる。ヘイゲンは事故によりキャリアを失い、包帯で覆われたような姿で描かれている。科学者のケイトリン・ベイツ(ナオミ・アッキー)のもとで実験的な治療を受け、体が粘土のように変形する能力を手に入れる。当初はコミック版のクレイフェイスのように犯罪に手を染める存在だったが、予告編からは、溶ける肉体がもたらす生理的な恐怖が強調されている。
この予告編の雰囲気は、クリエイター陣の経歴からも納得できる。脚本を手掛けたのはマイク・フラナガン。Netflixシリーズ「ヒルハウスの幽霊」や「ミッドナイト・マス」の監督として知られるホラーのスペシャリストだ。DCユニバースの責任者ジェームズ・ガンによれば、フラナガンは「クレイフェイス」の構想を伝えた際、その説得力に圧倒され、すぐに制作に踏み切ったという。監督にはジェームズ・ワトキンスが起用された。最近では「スピーク・ノー・イーヴル」のリメイク版を手掛けた実績を持つ。
さらに興味深いのは、本作がクレイフェイスのホラーとしてのルーツに回帰している点だ。クレイフェイスの原型となったのは、1940年の「デテクティブ・コミックス」第40号に登場したバジル・カーロ。B級映画の俳優だった彼は、現実と映画の区別がつかなくなり、演じた殺人犯そのものになってしまった。1961年の「デテクティブ・コミックス」第298号で初登場したマット・ヘイゲンもまた、奇妙なプラズマにさらされ、巨大なスライム状の怪物へと変身した。
スーパーヒーローとホラーの融合は珍しいものではない。バットマンやジョーカーのようなキャラクターは、パルプ・フィクションの暗い側面と深く結びついている。ハルクは「ジキル博士とハイド氏」を、ファントムは「フランケンシュタイン」をそれぞれモチーフとしている。その一方で、スーパーヒーロー映画がホラーの要素を全面に押し出した例は少ない。インディーズ作品の「スポーン」や「ファウスト:ダムド・ラブ」はコスチュームとモンスターを組み合わせているが、ホラー要素を徹底したのは「ブレイド」シリーズと「ニュー・ミュータント」程度だ。しかも、それらの作品は最終的にスーパーヒーロー的な展開に回帰する。
しかし、「クレイフェイス」の予告編が示唆するのは、まったく異なるアプローチだ。スーパーヒーロー映画という枠組みを、新しく、衝撃的で、そして恐怖に満ちたものへと再構築する可能性を秘めている。