イリノイ州南部の小川や河川を泳ぐ「ビッグアイ・シナー」と呼ばれる小型淡水魚は、水質が健全であることを示す指標の一つだ。同州の絶滅危惧種リストに掲載されているこの魚は、長年にわたる開発や農業排水による生息地の喪失にもかかわらず、生き延びてきた。
しかし、州の二つの機関間で絶滅危惧種保護を巡る対立が激化しており、同魚の存続が危ぶまれている。昨年の夏、州の自然資源局(IDNR)は、ユニオン郡の建設現場で作業を開始する前に、同魚の生息調査と保護措置を求めた。具体的には、同魚が確認された場合、影響を最小限に抑えるための許可申請を義務付ける内容だった。だが、州交通局(IDOT)はこれを拒否した。
IDOTの拒否理由はシンプルだった。「魚は泳いで逃げる」というものだ。同機関が内部文書で示したこの対応は、州の絶滅危惧種保護法の執行が揺らいでいる実態を浮き彫りにしている。WBEZとGristが入手した文書によると、IDOTは昨年、州の専門家から絶滅危惧種への影響を最小化するための許可申請を繰り返し無視していたことが判明した。
州交通局は州内最大の公有地所有者であり、過去1年間で州の絶滅危惧種保護法を少なくとも11件にわたり無視していた可能性がある。これは、公的資金で実施されるプロジェクトが絶滅危惧種を脅かす事態を招いていることを示唆している。
州法と連邦法の保護体制
米国の連邦絶滅危惧種法(1973年制定)は、現在1,700種近くの動植物を保護しており、このうち約300種の絶滅を防いできた。ほぼすべての州には独自の絶滅危惧種法があり、イリノイ州も1972年に制定された州法で513種を保護している。同法は、絶滅危惧種に影響を与える可能性のある公共事業の着工を、事前に影響を最小化する措置を講じるまで停止させる権限を持つ。
連邦法は、絶滅危惧種の回復に大きな成果を上げてきた。例えば、ハクトウワシやハイイログマ、ハイイロオオカミの個体数回復に貢献したと評価されている。しかし、連邦法は議会や政権による攻撃にさらされている。昨年の地球の日には、下院共和党が連邦法の保護措置を骨抜きにする法案を提出したが、可決には至らなかった。また、トランプ政権は今年、連邦法における「害」の定義を撤廃する規則を発表している。
州レベルでも揺らぐ保護体制
連邦レベルだけでなく、州レベルでも保護体制の弱体化が進んでいる。イリノイ州の事例は、州法の執行が機関間の対立によって阻害される可能性を示している。専門家らは、こうした対立が絶滅危惧種の存続に深刻な影響を与える恐れがあると指摘する。
ビッグアイ・シナーの保護を巡る対立は、州内の生態系保全の在り方を問う重要な事例となっている。