米国インディアナ州で2023年に成立した、幼稚園から3年生までの児童に対し「人間の性に関する教育」を禁止する州法について、第7巡回区控訴裁判所が合憲との判断を下した。
同法は、インディアナ州一般議会が2023年に可決した「House Enrolled Act 1608(HEA 1608)」に基づくもので、州法第20-30-17-2条に規定されている。同条は、幼稚園から3年生までの児童に対し、学校・教職員・外部委託業者が「人間の性に関する教育」を行うことを禁じている。
ただし、児童からの質問に対する回答や、教育省が定める学術基準(科学・数学など)に基づく指導、児童虐待防止教育は例外として認められている。その一方で、法律上の「指導(instruction)」や「人間の性(human sexuality)」の定義は明確にされていない。
教師による訴訟と争点
同法に反対する教師の原告は、1~3年生を担当する教師で、自身の表現の自由が侵害されると主張していた。具体的には、教室図書館にLGBTQ+に関連する書籍を置くこと、自身の水筒や車にプロLGBTQ+メッセージのステッカーを貼ること、児童が性的アイデンティティに関する差別的な言葉を使った際に是正することなどが、法律によって制限される可能性があると訴えていた。
また、原告は「指導」や「人間の性」の定義が曖昧であるため、意図せず法律に抵触し、教員免許を失うリスクがあると懸念していた。
裁判所の判断:教室内指導は公的職務の一環
第7巡回区控訴裁判所のマイケル・スカダー判事、キャンディス・ジャクソン=アキワミ判事、ドリス・プライアー判事による合議体は、原告の主張を退けた。裁判所はまず、「指導(instruction)」の定義について、一般的な意味として「教える行為や実践、知識や指導の伝達」を挙げ、同法が規定される教育法第30条「カリキュラム」の文脈から、教師が教育目的で知識を伝達する行為に限定されると解釈した。
その上で、同法は幼稚園から3年生までの教室内指導に適用されるが、これは「教師が教育目的で行う知識の伝達」に該当すると結論付けた。裁判所は、教室内指導は憲法上の表現の自由の保護対象外であり、教師の公的職務の一環であると判断した。
具体的には、教師がカリキュラムに基づく授業を行う場合でも、突発的なレクチャーを行う場合でも、いずれも「公的職務に基づく発言」に該当するとした。また、児童が差別的な言葉を使った際に是正する行為も、教師の職務の一環であり、法律の対象外であるとの見解を示した。
今後の影響と課題
同判決は、教師の表現の自由を巡る議論に一石を投じるものとなった。一方で、法律の定義が曖昧であることから、今後も解釈を巡る議論が続く可能性がある。また、LGBTQ+に関連する教育や表現の自由について、州レベルでの法整備が進む中で、同様の訴訟が各地で提起されることも予想される。