米国で進行中のイーロン・マスクによるOpenAIに対する訴訟は、単なる億万長者同士の争いにとどまらない。マスクはOpenAIの共同創設者の一人として、2015年の設立当初から同社に多額の寄付を行ったが、その後の非営利団体から営利企業への転換に疑問を呈している。

マスクは、OpenAIのCEOサム・アルトマンや社長グレッグ・ブロックマンらを相手取り、同社の利益追求志向について誤解を招く行為があったと主張。同社の企業再編を無効にするよう求めている。しかし、法律専門家によれば、この訴訟でマスクが敗訴しても、別の形で目的を達成できる可能性があるという。

ブロックマンの日記が示すOpenAIの変遷

先週公表された裁判資料には、ブロックマンが2017年に記した日記の一部が含まれていた。「どうやったら億万長者になれるのか?」という疑問が綴られており、当時のOpenAIが非営利団体から営利企業へと変貌しつつあった過程が垣間見える。ブロックマンは自身の貢献に対する報酬として、現在約300億ドル相当と評価される株式を取得したが、現金ではなく株式であった。

法廷外の影響力:検察当局の判断見直しへ

マスクの訴訟が注目を集める一方で、最も重要な影響は法廷外で起こる可能性がある。カリフォルニア州とデラウェア州の検察当局は昨年10月、OpenAIの営利部門をパブリック・ベネフィット・コーポレーション(公益法人)として株式上場に向けた再編を承認した。しかし、この決定が覆される可能性は低いと専門家は指摘する。

その一方で、新たな証拠や世論の高まりによって、検察当局が再検討に踏み切る可能性はある。実際、60以上の市民団体で構成される「EyesOnOpenAI」は19日、カリフォルニア州司法長官ロバート・ボンタ宛てに書簡を送付し、同社の再編を再検討するよう求めた。

専門家の見解:マスクの勝訴は困難だが目的は達成可能

法律専門家によれば、マスクがOpenAIの再編を覆す判決を勝ち取るのは極めて困難だという。しかし、彼が提示する証拠が強力であれば、検察当局や世論が動き、OpenAIが非営利的な理念に回帰する契機となる可能性がある。

「マスクが敗訴しても、彼の主張が世間に与える影響によって、OpenAIのガバナンスが変化するかもしれない」と専門家は述べている。

今後の展開:IPOへの影響は?

OpenAIは現在、株式上場に向けた準備を進めており、再編が完了すればIPOが現実味を帯びる。しかし、この訴訟や外部からの圧力によって、同社の体制や方針に変化が生じる可能性がある。特に、非営利団体としての理念を重視する動きが強まれば、上場後の経営方針にも影響を及ぼすだろう。

マスクの狙いは、単にOpenAIを訴えることではなく、同社が非営利の原点に立ち戻るよう仕向けることにあるのかもしれない。

出典: Vox