コメイ元FBI長官がトランプ前大統領の殺害を示唆したとする容疑は、到底信じがたい主張だ。しかし、ノースカロライナ州東地区の連邦検事W・エリス・ボイルが4月28日に起訴状を提出し、その主張が公式な容疑となっている。
この根拠となったのは、2025年5月にコメイ氏がノースカロライナ州の海岸で撮影したInstagramの写真だ。写真には「cool shell formation on my beach walk(海岸の散歩で見つけた素敵な貝殻アート)」というキャプションとともに、海岸の砂に並べられた貝殻で「86 47」とメッセージが形成されていた。
ボイル検事は、この「47」がトランプ氏を指すと主張する。なぜなら、トランプ氏は現在の任期で米国の第47代大統領だからだ。この解釈については異論がない。しかし、ボイル検事はさらに「86」が「殺す」という意味だと主張し、合わせて「米国大統領に危害を加える意図を示す真摯な脅迫」に該当すると主張している。
この解釈は、言語学的にも法的にも極めて問題がある。まず、「86」という表現は、1950年代にバーで迷惑な客を追い出す際に使われたスラングが起源であり、一般的に「殺す」という意味で使われることはない。また、最高裁判例によれば、脅迫が「真の脅迫」と認定されるには、発言者の意図と受け手の合理的な理解が重要となる。コメイ氏の投稿は、そのいずれの基準も満たしていない可能性が高い。
トランプ政権による2度目の起訴
これは、トランプ政権がコメイ氏を起訴しようとする2度目の試みだ。コメイ氏はトランプ氏の「敵リスト」の筆頭に挙げられている人物の一人だ。2020年9月に行われたコメイ氏の上院証言を巡り、トランプ氏は当時の検事総長パム・ボンディに対し、SNSで「これ以上待てない。今すぐ正義を執行しろ。 justice must be served, now!!!」と圧力をかけた。
その結果、5日以内にコメイ氏の起訴が実現したが、その直後に連邦判事によって却下された。理由は、起訴を主導した検事が違法に任命されていたためだ。当時の証言は2020年9月に行われたため、時効が成立していたが、今回の貝殻写真は1年前に投稿されたものであり、時効には間に合っている。
しかし、ボイル検事の主張する「86 47」の解釈が法廷で認められる可能性は極めて低い。言語的な裏付けが乏しいだけでなく、最高裁判例の基準にも反するからだ。裁判所は、この容疑を違憲として却下する可能性が高いと専門家は指摘している。