米国の公共交通インフラの遅れが指摘される中、テスラCEOで起業家のイーロン・マスク氏は、自身のトンネル掘削企業「ザ・ボーリング・カンパニー」を通じて、中国をはるかに上回る交通システムを「簡単に」構築できると主張している。
マスク氏は1月、カリフォルニア州の高速鉄道計画が総額1,260億ドル(約18兆円)に膨らむとの報道を受け、X(旧Twitter)で発言。あるユーザーが「この予算でロサンゼルスとサンフランシスコ間の無料フライトを200年間維持できる」と指摘すると、マスク氏は「ザ・ボーリング・カンパニーがダウンタウン間を結ぶハイパーループトンネルを、このコストの5%で建設でき、地球上のあらゆる高速鉄道を凌駕する技術的優位性を持つ」と反論した。
しかし、専門家らはハイパーループを「実用性と安全性に乏しい」と批判。この構想は真空チューブ内を高速で移動するカプセル型車両を用いるが、実現には多くの技術的課題が残る。マスク氏の主張に対し、テスラ支援アカウント「Teslaconomics」が「なぜまだ実現していないのか」と問うと、マスク氏は「官僚主義」を理由に挙げた。
「高速鉄道の本当の目的は、交通手段ではなく、官僚やコンサルタント、労働組合への資金 laundering(資金洗浄)だ。これまでに費やされた数十億ドルはそこに消えた。だからこそ、コスト効率の高い交通システムを望まないのだ」
米国の公共交通インフラの遅れは、カリフォルニア州の高速鉄道計画の遅延が象徴的だ。2008年に着工が承認されたロサンゼルス・サンフランシスコ間の路線は、わずか80マイル(約129キロ)の敷設にとどまる。その一方で、中国は2008年以降、2万3,500マイル(約3万7,800キロ)以上の高速鉄道網を構築し、最高時速210マイル(約338キロ)の高速列車を運行させている。
マスク氏の発言は、中国の技術力を「凌駕する」との主張も含まれ、一見すると野心的だが、ザ・ボーリング・カンパニーの実績は乏しい。2022年に同社は「数年以内に実用的なハイパーループを建設する」と発表したが、未だ着工されていない。唯一の実績はラスベガスで計画中の「ベガス・ループ」で、自動運転のテスラ車を時速155マイル(約250キロ)で走行させ、観光客を数分で目的地まで輸送するというものだ。しかし、これまでに掘削されたトンネルはわずか数マイルに過ぎない。
専門家らは、ハイパーループ構想の実現可能性について懐疑的な見方を示す。真空チューブ内の圧力管理や安全性の確保など、技術的なハードルは高い。また、米国の官僚主義的な規制や資金調達の問題も、プロジェクトの実現を阻む要因となっている。
マスク氏の発言は、自身の企業の技術力を誇示する一方で、米国のインフラ整備の遅れを浮き彫りにしている。しかし、実現性の乏しい構想が机上の空論に終わるのか、それとも未来の交通システムとして実を結ぶのかは、今後の動向が注目される。