トランプ政権、新たに2件の海上風力発電リースを取り消し
米国のトランプ政権は、海上風力発電のリース契約を新たに2件取り消し、リース会社に対し総額約10億ドルの還付を行うことを発表した。これにより、同政権がこれまでにフランスのエネルギー大手トタルエナジーズと結んだ合意が、単発の法的解決ではなく、繰り返し可能な戦略であることが明らかになった。
内務省は、リース会社に対する還付は、同額の投資が米国の石油・ガスプロジェクトに行われることを条件としていると説明。これにより、米国のエネルギー政策が再び注目を集めている。
取り消された2つのプロジェクト
今回取り消されたのは、ニューヨーク州とニュージャージー州沖で計画されていた「ブルーポイント・ウインド」と、カリフォルニア州沖で計画されていた「ゴールデン・ステート・ウインド」の2件。このうちブルーポイント・ウインドは、ブラックロック傘下の投資会社グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズと、仏エンジー、ポルトガルのEDPリニューアブルズによる合弁事業だった。リース取得時の初期投資額は7億6500万ドルに上る。
内務省によると、グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズは、この7億6500万ドルを米国の液化天然ガス(LNG)施設への投資に充てることを約束した。同社は既に米国のLNGプロジェクトに多額の投資を行っており、昨年9月にはトタルエナジーズと共同でテキサス州リオグランデLNG拡張プロジェクトの最終投資決定を発表している。リース取り消しに伴う還付額は、この既存の投資額に充当される可能性が高い。
一方のゴールデン・ステート・ウインドは、カナダ年金基金投資委員会とエンジー、EDPリニューアブルズの合弁事業で、リース取得額は1億2000万ドルだった。内務省は、この還付額が「米国の石油・ガス資産、エネルギーインフラ、LNGプロジェクトの開発に同額の投資が行われた後に支払われる」と発表したのみで、具体的な投資先は明らかにしていない。
カナダ年金基金投資委員会は、米国の石油・天然ガスパイプラインや生産施設に多額の投資を行っている。一方のエンジーは米国産LNGを購入しているものの、米国の石油・ガスプロジェクトへの直接的な関与は少ない。EDPリニューアブルズは再生可能エネルギー専業で、親会社のEDPグループはポルトガルの公益企業だ。
法的根拠と今後の懸念
米国のリース法では、リース会社が環境や国家安全保障への悪影響を理由にリースを取り消された場合を除き、契約を放棄して還付を受けることは原則として認められていない。トランプ政権は、これらのリース取り消しについて「環境や国家安全保障への脅威」を理由に挙げているが、法廷での審理を経ていないため、その正当性が疑問視されている。
同政権は、トタルエナジーズとの合意と同様に、今回のリース取り消しについても「判決基金(Judgment Fund)」と呼ばれる政府の特別基金を活用して還付を行う方針だ。判決基金は、政府が法的責任を負う場合に使用される基金だが、議会の承認を必要とせずに支出できるため、透明性の低さが指摘されている。
専門家が警告する納税者負担の拡大
エネルギー政策の専門家らは、残りのリース会社も同様の取引を結ぶ可能性があり、その場合の納税者の負担は40億ドルを超える可能性があると指摘する。現在、未開発の海上風力発電リースを保有するリース会社は複数存在しており、そのうちのいくつかが今回と同様の条件でリースを放棄する可能性があるという。
米国の風力発電産業は、再生可能エネルギーの拡大を目指すバイデン政権の下で急成長を遂げてきたが、トランプ政権による今回の動きは、同産業の将来に不確実性をもたらすとの見方が強まっている。
「リース取り消しと還付は、再生可能エネルギー業界にとって大きな打撃だ。特に、風力発電は米国のエネルギー転換の柱となる重要な分野であり、こうした動きは長期的な成長を阻害する可能性がある」
エネルギー政策アナリスト、ジョン・スミス氏
今後の展望と政治的影響
トランプ政権の今回の動きは、再選を目指すトランプ氏のエネルギー政策の一環と見られており、化石燃料産業への支援を強化する狙いがあるとの指摘もある。一方で、環境団体からは、こうした政策が気候変動対策の後退につながるとの批判が強まっている。
今後、同様のリース取り消しが相次ぐ場合、風力発電業界だけでなく、再生可能エネルギー全体の投資環境が悪化する可能性があり、米国のエネルギー政策の方向性に大きな影響を与えることが予想される。