福田光司監督の最新作「ナギノート」は、彫刻というモチーフを中心に据えた作品であり、 filmmaker が何かを削り出そうとする姿勢が随所に感じられる映画だ。時に深く、時に控えめに、登場人物たちの内面を露わにしながらも、全体としては距離感のある表現が目立つ。監督は各キャラクターの輪郭を探り続けるが、その形が最終的にどうなるのか、自身でも確信を持てていないかのようだ。

とはいえ、福田監督の近作「ラブライフ」ほどの完成度やインパクトはないものの、「ナギノート」には見過ごせない魅力が確かに存在する。低調なドラマでありながら、芸術創造の労苦とそこから生まれる絆に焦点を当てた瞬間こそが、この映画の真価を示す。特に、爆音が轟く中で静寂が訪れ、彫刻家の作業に没頭するシーンでは、より深い共鳴と真実が伝わってくる。

カンヌ国際映画祭コンペティション部門で初上映された本作は、建築家の由里(石橋静河)が、かつての義姉であり現在は彫刻家として暮らす依子(松たか子)を訪ねるところから物語が始まる。由里は東京で暮らし、依子は岡山県奈義町という小さな町で暮らしている。この町は、地元のラジオが住民の訃報を流すほどの静けさだが、その一方で、近隣で行われる軍事演習の轟音や、遠く離れたウクライナ戦争の影響が常に垣間見える場所でもある。それでも、日常は淡々と続いていく。

二人の女性は、由里が依子の彫刻のモデルとなることで、徐々に心を開き始める。過去の痛みを振り返りながらも、未来への模索を語り合う。そのやり取りは、時に冗談を交えながらも、決して対立するわけではない。スティーヴン・ソダーバーグ監督の「ザ・クリストファーズ」のような芸術家同士の火花というよりも、ケリー・ライヒャルト監督の「ショウイング・アップ」に近い、創作の過程を静かに追う作品だ。突如として閃く創造の瞬間というよりも、何もないところから何かが形作られていく過程そのものが、強い感情的なインパクトを与える。

彫刻そのものは緻密に作り込まれているが、何よりも目を引くのは、二人の女性の関係性だ。監督は彼女たちをやや距離を置いて描写するが、だからこそ逆に、彼女たちの内面の機微が際立って見える。

出典: The Wrap