米首都ワシントンD.C.の連邦地裁、ジェームズ・ボスバーグ主任判事は5月、中国・瀋陽の教育投資プロジェクトを巡る訴訟「ショフナー対瀋陽大東区人民法院」において、原告側が提出した訴状の大半を非公開とする請求を却下する判断を示した。
原告側は、瀋陽市内で行われた早期教育投資プロジェクトに関連し、外国主権免除法(Foreign Sovereign Immunities Act)、外国人損害賠償法(Alien Tort Statute)、拷問被害者救済法(Torture Victim Protection Act)に基づく主張を行っていた。しかし、提出された訴状はわずか8ページの概要版で、実質的な主張は300ページ超の非公開文書に依存していた。
裁判所が指摘した二つの問題点
判決文によると、原告側の請求には二つの重大な問題があった。
- 過剰な非公開要請:原告側は「個人安全」「外国関連手続き」「外国政府関与の進行中案件」といった理由で非公開を求めたが、その範囲は主張と比較して著しく広範だった。また、非公開が防げない脅威を理由に全面的な封印を求める矛盾もあった。
- 被告への情報開示の必要性:原告側は「被告側からの脅威」を理由に非公開を求めたが、被告側は提訴された当事者であり、訴訟の進行に伴い主張内容を知る権利がある。裁判所は「被告側に情報を開示する必要性を否定する非公開理論は成り立たない」と指摘した。
「骨格のみの訴状」が招く弊害
原告側は、公開用の8ページの骨格版訴状と、実質的な主張を含む300ページ超の非公開文書を提出していた。しかし、裁判所はこれを「実質的な訴状の封印に等しい」と断じた。公開の原則に基づき、裁判所は「原告側は公開用の訴状に必要な情報を盛り込むべきであり、非公開文書に依存することは許されない」と結論付けた。
プライバシー保護の必要性は認めるも
判決文では、原告側の主張のうち、住所情報や銀行取引明細などのプライバシーに関わる部分については、個別の黒塗り(リダクション)での対応が可能だと認めた。しかし、原告側が提案した「全面的な非公開」は、その範囲を大きく超えるものだった。
「原告側が求める非公開の範囲は、公開用訴状の骨格版が持つ機能を奪うものであり、司法の透明性原則に反する」
— ジェームズ・ボスバーグ主任判事
また、原告の一人が提訴後に拘束されたとされる事案についても裁判所は「深刻な懸念事項」と認識したが、それでも非公開の正当性は認められなかった。
今回の判断は、外国政府を相手取った訴訟における情報開示の在り方に一石を投じるものとなった。