米国の共和党支持層を中心に、北大西洋条約機構(NATO)に対する米国民の支持が低下している。この背景には、トランプ前大統領の長年にわたるNATOへの懐疑が影響しているとみられる。
共和党支持層で顕著な支持率低下
ピュー・リサーチ・センターの調査によると、共和党支持層の60%が「米国はNATO加盟からあまり利益を得ていない、あるいは全く得ていない」と回答しており、2025年の50%から11ポイントも低下した。特に、共和党および共和党寄りの独立層におけるNATO加盟支持率は、昨年から49%から38%へと11ポイント減少した。2022年には55%が支持していたが、現在は逆転現象が起きている。
一方、民主党および民主党寄りの独立層では82%が引き続きNATO加盟を支持しており、過去5年間でほぼ変化はない。しかし、共和党支持層の支持率低下により、米国民全体のNATO加盟支持率は2021年の71%から現在の59%へと低下した。
トランプ氏のNATO批判が影響か
トランプ前大統領は1987年、当時の日本やサウジアラビアなど「裕福な同盟国」に対し、米国が防衛費や人的損失を負担している現状を批判する全面広告を新聞に掲載した。当時の主張は「なぜこれらの国々は米国に対し、防衛の対価を支払わないのか」というものだった。
39年後の現在も、トランプ氏のNATOに対する懐疑は変わっていない。第一期政権中にはNATOの価値を公然と疑問視し、最近では「米国が必要な時にNATOが存在しなかったように、今後も存在しないだろう」と述べ、米国のNATO脱退を示唆している。
米国が突出するNATOの防衛負担
NATO事務総長の年次報告書(2025年)によると、米国はNATO加盟国のGDPの52%を占める一方で、防衛費全体の60%を負担している。2020年と比較すると、当時はNATO加盟国のGDPに占める米国の割合が53%であったにもかかわらず、防衛費の71%を負担していた。この間、フィンランドとスウェーデンの加盟により加盟国数は増加したが、米国の負担は依然として突出している。
軍事力の不均衡も深刻だ。2023年12月、ロシアのウクライナ侵攻後、ウォールストリート・ジャーナルは「英国軍(米国の主要同盟国で欧州最大の防衛費支出国)は展開可能な戦車が約150両、長距離砲が十数門しかない」と報じた。フランスについても「長距離砲の数が限られている」と指摘されている。
「米国がNATOの防衛を担い続ける一方で、欧州諸国の軍事力は依然として脆弱なまま。同盟の実効性を高めるためには、加盟国間の貢献度の見直しが急務だ」
——軍事専門家のコメント
今後の展望と課題
- 共和党内の分裂加速:トランプ氏の影響力が強まる中、党内でNATO支持派と反対派の対立が深まる可能性がある。
- 欧州諸国の防衛力強化:米国の負担軽減に向け、欧州諸国が防衛費を増額する動きが加速する見込み。
- NATOの将来的な再編:米国の関与度低下を懸念する加盟国と、米国の主張を受け入れる加盟国との溝が広がる可能性がある。