米国では現在、民主党の2028年大統領選挙に向けた非公式選挙戦(shadow primary)が既に始まっており、経済成長を重視する「豊かさ運動」と、労働者の権利を重視する政策との対立が鮮明になりつつある。

この動きを受け、ニューヨーク・タイムズのコラムニストEzra Klein氏は先週のポッドキャストで、自身の著書『Abundance(豊かさ)』の共著者Derek Thompson氏と、政治学者Marc Dunkelman氏を招き、両者の書籍が提唱する政策運動について議論した。同氏によれば、民主党の有力候補者の一部が既に「豊かさ運動」の主張を取り入れ始めているという。

例えば、ペンシルベニア州知事Josh Shapiro氏は規制緩和と迅速な政策実行を掲げ、「Get Stuff Done(仕事を成し遂げよう)」をモットーに掲げている。また、カリフォルニア州知事Gavin Newsom氏も州内の住宅建設を加速させる大規模な計画を発表したが、労働組合からの反発により計画は停滞している。

労働組合は「豊かさ運動」の障害か、それともパートナーか?

そんな中、The Roosevelt Instituteが発表した新たな報告書は、労働組合が「豊かさ運動」の重要なパートナーであると主張し、コロンビア大学の労働政策専門家Kate Andrias氏とAlex Hertel-Fernandez氏が提唱する「民主的豊かさ(democratic abundance)」の概念を提言している。

報告書の共著者であるHertel-Fernandez氏は、「我々は労働者がこの議論のどこに位置するのかを改めて問い直す必要がある」と述べ、労働組合が政策立案に不可欠な存在である理由を説明した。

労働組合がもたらすメリットとは

報告書は、「豊かさ運動」からしばしば指摘される「労働組合が建設コストを押し上げ、プロジェクトを遅延させる」という批判に反論している。同報告書によれば、米国の建設コストは労働組合の存在が強い国々よりも高く、逆に労働組合の弱い州ほどコストが上昇していることから、コスト上昇の要因は他にあると指摘する。

また、労働組合は法的に選挙やガバナンス構造が規定されており、他の利益団体とは異なり、メンバーの意見をより忠実に反映していると主張。これにより、労働組合は「豊かさ運動」が批判するような「メンバーの声を反映しない利益団体」とは一線を画す存在であるとしている。

労働組合が「豊かさ運動」に貢献する理由

報告書はさらに、労働組合が「豊かさ運動」に具体的にどのような貢献ができるのかを提言している。具体的には以下の通りである。

  • 熟練労働者の供給源:労働組合は米国で最も優れた職業訓練プログラムを有しており、国内のインフラ整備に必要な技術を持つ労働者を輩出している。
  • コミュニティとの連携強化:民主的な組織である労働組合は、地域社会との連携を強化し、プロジェクトが地域のニーズに合致するよう調整する役割を果たす。これにより、住民の反対や訴訟によるプロジェクトの遅延を防ぐことができる。
  • 政策実行の円滑化:労働組合は、規制緩和や迅速な政策実行を求める「豊かさ運動」の目標達成に向け、労働者の声を政策に反映させる橋渡し役となる。

同報告書は、労働組合が「豊かさ運動」の成功に不可欠な存在であると結論付けている。

今後の展望と課題

一方で、労働組合と「豊かさ運動」の両立には課題も多い。特に、住宅建設の分野では、労働組合の賃金や労働条件に関する要求がコスト上昇の一因となっているとの指摘も根強い。また、労働組合の政治的影響力が政策決定に与える影響についても議論が続いている。

今後、民主党内では「豊かさ運動」と労働組合のバランスをいかに取るかが、2028年選挙戦の重要な争点となる可能性が高い。報告書の提言が、今後の政策立案にどのような影響を与えるのか注目される。