最高裁が投票権法を骨抜きに:黒人議員の議席激減の危機

米国最高裁判所は6月29日、投票権法(Voting Rights Act of 1965)の第2条を事実上無力化する判決を下した。この法律は Jim Crow 法を打破し、黒人を含む有色人種の選挙参加を保障してきた歴史的な公民権法だ。

1865年から1965年までの100年間、米国では黒人有権者が選挙から排除されてきた。直接的な暴力だけでなく、人頭税や祖父条項などの「中立」を装った手法が用いられた。さらに、選挙区割り改定(gerrymandering)によって黒人票を希薄化させる手法も横行した。

投票権法第2条は、こうした巧妙な手法を規制するために制定された。特に南部では、黒人や他の有色人種の政治力を奪う選挙区改定が後を絶たなかったからだ。

ルイジアナ州の判決がもたらす衝撃

今回の判決はルイジアナ州 v. Callais 事件に関するもの。最高裁はルイジアナ州で新たに設置された第2選挙区(黒人多数区)の創設を違憲とし、第2条の実効性を奪う判断を示した。これにより、選挙区改定が minority vote を侵害していると立証することが事実上不可能になった。

判決直後、選挙権問題の専門家である Ari Berman 氏と Pema Levy 氏に話を聞いた。二人は口を揃えて「これは歴史的な後退だ」と語る。

「今日という日は胸が張り裂ける思いです。長年この問題を追いかけてきましたが、今回の判決はまさに「最後の一撃」です」
Pema Levy

「投票権法を弱体化させることは、単に一つの法律を弱めるだけではありません。米国の民主主義そのものを揺るがす行為です」
Ari Berman

「Jim Crow の再来」:選挙権侵害の新たな手法

二人の専門家は、今回の判決がもたらす深刻な影響について警鐘を鳴らす。

  • 選挙区改定の自由化:党派的な選挙区割り改定によって、少数派の選挙権が奪われるリスクが高まる。
  • 人頭税や識字テストの不要化:かつての Jim Crow 時代の手法に頼らずとも、党派的な選挙区改定で minority vote を抑圧できるようになる。
  • 黒人議員の議席激減:Reconstruction 終了後最大の議席減少が起こり、議会黒人会議員(Congressional Black Caucus)の3分の1が失われる可能性も。

「もはや人頭税や識字テストは必要ありません。党派的な選挙区改定によって、自党に投票しない有権者の選挙権を奪うことができるのです。これは Jim Crow の手法そのものです」
Pema Levy

「Reconstruction 以降で最大の黒人議員減少が起こる可能性があります。議会黒人会議員の3分の1が失われるかもしれません」
Ari Berman

米国民主主義の未来に暗雲

今回の判決は、米国の多民族民主主義の未来に暗い影を落とす。選挙区改定の自由化は、党派的な利益のために minority vote を抑圧する新たな手段を与えることになるからだ。

専門家らは、今後さらなる選挙権侵害の拡大を懸念している。選挙区改定の基準が緩和されることで、有色人種の政治参加が後退する可能性が高まっている。

米国の民主主義は、かつての Jim Crow 時代へと逆戻りするのか。それとも、新たな闘いを迎えるのか。その行方が注目される。