連邦政府が定めた最低1カ月の就労要件
米国では、メディケイド(低所得者向け医療保険)の受給に際し、申請者が就労、就学、またはボランティア活動を1カ月以上行っていたことを証明することが求められる新たなルールが導入される。このルールは、2023年7月に当時のトランプ大統領が署名した「One Big Beautiful Bill Act(大規模包括予算法)」の一環として定められたものだ。
同法では、各州が就労期間を1カ月、2カ月、または3カ月のいずれかに設定できる柔軟性が認められている。多くの州では最も緩やかな1カ月を採用する見込みだが、共和党が支配する州ではより厳格な基準を求める動きが加速している。
州独自のルール強化:インディアナ州とアイダホ州が先行
インディアナ州では、メディケイド受給に際し、就労または同様の活動を3カ月連続で実施していたことを証明することが義務付けられた。同州の共和党議員らは、このルールを「公的プログラムの無駄、不正、悪用を防ぐ」ためだと主張している。同州のゴートン知事は2024年3月4日に法案に署名し、連邦法で認められた最長期間である3カ月を採用した最初の州となった。
同様の動きはアイダホ州でも見られ、同州の共和党議員らは4月10日に3カ月の就労要件を含む法案に署名した。このほか、アリゾナ州、ミズーリ州、ケンタッキー州でも同様の動きが進んでおり、連邦法の実施に関する柔軟性を制限する狙いがある。
専門家「通常であれば州議会が介入することはない」
「通常、州議会がこのような決定に介入することはありません。連邦政府がガイドラインを示さない中で、州独自のルールが広がっている状況は異例です」
ルーシー・ダグノー(米国がん協会アドボカシー部門上級幹部)
対象は約1850万人、子どもや高齢者、障害者は除外
連邦議会予算局(CBO)の推計によると、新ルールの対象となるのは約1850万人の成人で、42州とワシントンDCで実施される見込みだ。ただし、子ども、65歳以上の高齢者、障害者、重篤な健康問題を抱える人々は対象外となる。
通常であれば、州の管理者が連邦政府の新基準への対応方法を策定し、連邦規制当局からの指針を仰ぐのが一般的だ。しかし、医療・メディケイドサービスセンター(CMS)は、包括的予算法の多くの側面について州に対する具体的な指針を未だ示しておらず、その結果、州議会が独自に介入する事態となっている。
インディアナ州議会での議論:必要性を巡る対立
インディアナ州議会では、共和党のクリス・ガルテン州上院議員が1月に法案を提出し、連邦のメディケイドルールと州法を「整合させる」必要性を強調した。また、同議員は「無駄、不正、悪用」を防ぐためだと主張したが、民主党のファディ・カドゥーラ州上院議員はこの法案の必要性に疑問を呈した。
カドゥーラ議員は、州のメディケイド事務局長であるミッチ・ルーブ氏に対し、不正受給者の実数を示すよう求めた。ルーブ氏は「ごくわずかだろうが、ゼロにはならない」と回答した。この答弁を受け、カドゥーラ議員は「証拠がない」と指摘した。