世界的な肥料不足が深刻化する中、米国の農家が必要な肥料の確保に苦労している。その背景には、ホルムズ海峡の封鎖に加え、米国政府による肥料関税の導入があったことが明らかになった。

米農務省のブルック・ローリンズ長官は12日、肥料不足が「経済的な災害につながる可能性がある」と警告した。全米農業協会(Farm Bureau)の調査によると、米農家の70%が今年の肥料確保に支障をきたしていると回答している。世界の肥料供給の約30%が通過するホルムズ海峡の封鎖が直接の原因だが、その影響は米国政府が2017年に導入した肥料関税によってさらに悪化している。

トランプ前政権で米通商代表を務めたジェイムソン・グリール氏は、肥料関税の導入を主導した一人だ。グリール氏は、肥料関税導入前の2021年に米国際貿易委員会(ITC)で証言し、ロシアやモロッコからの肥料輸入が「米国企業に深刻な損害を与えている」と主張した。その結果、米国はモロッコとロシアからの肥料に対し、16%から47%の関税を課すことを決定した。

しかし、この関税導入は米国の農家に逆風となった。肥料価格の高騰により、農家の生産コストが上昇し、経営を圧迫している。その一方で、肥料市場を支配する二大企業、J.R. シンプロット社とモザイク社は、関税導入を強く支持していた。特にモザイク社は2017年から2023年にかけて毎年80万ドル以上をロビー活動に費やしており、当時ホワイトハウス主席補佐官を務めていたスージー・ワイルズ氏も同社のロビー活動に関わっていた。

グリール氏は、肥料関税導入前の2020年に米通商代表に就任する前、J.R. シンプロット社の顧問としてロシアとモロッコからの肥料輸入に対する反ダンピング関税の導入を主導していた。同社の財務報告書によると、グリール氏の就任時の履歴書には「J.R. シンプロット社のリン酸肥料に関する反ダンピング調査への参加を主導し、成功を収めた」と記載されていた。

トランプ前大統領は肥料価格の高騰に懸念を示し、「価格吊り上げを防ぐために注視している」と述べていたが、その裏で自身の政権の通商代表が肥料価格の高騰を招く政策を推進していたことになる。農家団体からは「関税導入により肥料価格が上昇し、供給不足が深刻化する」との警告が繰り返し出されていたが、政権はこれを無視していた。

「肥料関税は農家にとって大きな負担だ。政府は農家の声を聞くべきだった」
(全米農業協会関係者)

米国の肥料市場は、J.R. シンプロット社とモザイク社の二社で約90%を占めており、この寡占状態が価格高騰に拍車をかけている。農家は今後、肥料の確保にさらに苦労することが予想される。

出典: Reason