英国のZEV mandate:業界が主張する「目標未達」の実態
英国の自動車業界は数年にわたり、政府が設定するゼロエミッション車(ZEV)の販売目標を達成するには需要が不足していると主張してきた。しかし、政府の「ZEV mandate(ゼロエミッション車義務化)」に基づく目標は、実際には業界が上回る実績を上げていたことが、最新の公式データで判明した。
この主張と実態の乖離は、英国自動車工業会(SMMT)が発表する月次販売統計に合わせて、メディアが繰り返し報じてきたパターンでもある。多くの報道では「業界がZEV目標を達成できていない」と誤った情報が拡散されてきたが、実態は異なっていた。
2024年の実績:目標を上回る19.8%のEV販売シェア
英国政府は2021年、カリフォルニア州の制度を参考に「ZEV mandate」を導入した。これは、新車・新型バン販売のうち、毎年一定割合をZEV(主にEV)とする義務を課す制度だ。乗用車の場合、2024年の目標は22%だったが、業界は当初「目標達成が困難」と警告していた。
2024年11月、SMMTは「業界は22%の目標を達成できず、18.7%にとどまる可能性が高い」と発表。これにより、業界は最大18億ポンドの「コンプライアンス・ペナルティ(達成不足に対する罰金)」を支払う可能性があると主張した。しかし、この見通しは外れていた。
英国政府が2026年初頭に公表した公式データによると、2024年の英国新車販売に占めるEVの割合は19.8%に達し、業界の当初予測(18.7%)を1ポイント以上上回った。さらに、政府が定める「柔軟措置」を考慮すると、実質的な達成率は24.5%に相当し、2.5%の余剰分が次年度に繰り越されることになった。
業界の主張と実態の乖離:柔軟措置がもたらす影響
業界がZEV目標の達成が困難だと主張する背景には、政府が設けた「柔軟措置」が大きく関係している。この措置により、自動車メーカーは低排出ガス車(ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車)の販売を通じてZEV目標を調整できる仕組みとなっている。
具体的には、以下のような柔軟措置が適用される:
- 低排出ガス車の販売による目標調整:ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の販売実績をZEV目標の達成に換算できる。
- クレジット取引・繰り越し:目標未達の場合、他社からZEVクレジットを購入したり、将来の目標に繰り越したりできる。
- 目標の段階的引き上げ:2024年の22%から、2030年には80%まで段階的に引き上げられるため、短期的な目標達成が難しいとの主張が生まれやすい。
これらの措置により、業界は表面的な目標(22%)は達成できなかったものの、実質的な達成率(24.5%)は目標を上回っていた。しかし、業界は依然として「自然な需要がZEV mandateの目標を下回っている」と主張し、政府に対し目標の「緊急見直し」を求めている。
今後の展望:業界と政府の対立構造
英国政府は2026年以降もZEV mandateの目標を段階的に引き上げる方針だが、業界はこれに反発している。特に、2030年までに80%という高い目標に対し、需要不足を理由に見直しを求める動きが強まっている。
一方で、EVシフトの加速に伴い、英国の自動車業界は電動化への対応を迫られている。政府は業界の主張を受け入れるのか、それとも現行の目標を維持するのか、今後の政策決定が注目される。
「業界はZEV mandateの目標達成が困難だと主張しているが、実際には柔軟措置の活用により、実質的な達成率は目標を上回っていた。この乖離は、業界の主張が需要不足だけでなく、政策の柔軟性にも依存していることを示している。」