米国保健福祉省(HHS)のロバート・F・ケネディ・ジュニア長官は、2027年度予算案を巡り議会で説明を続けているが、議員の多くはこれに反対している。同予算案は前年度比12.5%にあたる158億ドルの削減を提案しており、特に国立衛生研究所(NIH)への50億ドル削減が注目されている。NIHの予算は410億ドルに維持されるものの、研究所数は27から22に削減される見通しだ。
このほか、低所得世帯向けエネルギー支援プログラムの廃止(40億ドル削減)や、複数の健康関連部署を統合した新組織「健康アメリカ庁(AHA)」の設立(50億ドル削減)も盛り込まれている。ケネディ長官は16日、上院保健労働委員会で「HHSには女性の健康やマイノリティの健康、HIV、行動健康、オピオイド対策など9つの別個の部署が存在し、互いに連携していなかった。これを再編し、効率化を図る」と主張した。
しかし、議員らはこうした効率化の主張を退け、予算削減が医療研究や支援プログラムに悪影響を及ぼすと批判している。民主党のパティ・マリー上院議員(ワシントン州)は「NIHの研究資金が削減されれば、治療法の遅れや研究中止が生じ、命をかけて闘う患者に希望がなくなる」と述べた。また、民主党のリチャード・ニール下院議員(マサチューセッツ州)は「提案されている削減は米国民にとって有益ではない」と指摘。下院歳出委員会筆頭理事のローザ・デラウロ議員(コネチカット州)も「そのような削減は認められない」と強調した。
議員らの反発は、連邦政府による公衆衛生支出の削減が健康格差の拡大につながるとの長年の主張に基づく。マイケル・キャノン(カトー研究所健康政策研究部長)は「政府活動の是非を問う際、命を救う根拠を示すことはほとんどない。HHSの多くの取り組みは、倫理的・憲法的に正当化できず、社会全体に利益をもたらすとは言い難い」と述べた。
連邦政府による研究支援は第二次世界大戦後に拡大したが、それ以前は研究開発の約5分の1を民間が担っていた。黄熱病ワクチンの発見など、民間主導の研究は数々の成果を上げてきた。現在でも、幹細胞研究や膵臓がん治療などで民間の役割は大きい。しかし、HHSの拡大に伴い、国の債務も増加しており、その是非が問われている。