米国の電力業界を長年支えてきた「規制の枠組み(regulatory compact)」が、今、根本的な見直しを迫られている。この仕組みは、電力会社が州規制当局の承認を受けた投資に対し、規制されたリターンを得るというもので、数十年から1世紀にわたり業界の基盤となってきた。
しかし、この数週間で二つの出来事が、電力業界の転換点を象徴する出来事となった。
ペンシルベニア州知事が「20世紀型モデルは破綻」と断言
ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事は先週、同州の電力・ガス・水道事業者に宛てた書簡で、電力業界の20世紀型モデルが「破綻している」と指摘した。その理由として、「顕著なコスト上昇と電気料金の高騰」を挙げ、その一因が事業者側の政策や財務判断、特に近年の過度な料金値上げ申請にあると述べた。
バークシャー・ハサウェイCEOも規制モデルの限界を指摘
さらに、バークシャー・ハサウェイの新CEO、グレッグ・アベル氏も、同社の年次総会で同様の懸念を表明した。アベル氏はエネルギー部門出身で、電力業界の現状についてこう語った。
「課題は、規制の枠組みそのものにあります。当社は長期にわたり、規制当局の承認を受けた投資に対し、バークシャーの資本を投入し、得られた収益の一部を再投資してきました。その結果、バランスの取れた公平なリターンを得てきました。このモデルは長年にわたり機能してきましたが、今、そのバランスが崩れつつあります」
アベル氏によれば、電力会社は設備の老朽化に伴う高額な投資ニーズに直面している一方で、州の規制当局や知事らは電気料金の抑制を求めているという。「このバランスが崩れれば、当社は資本を再投入しなくなるでしょう」とアベル氏は警告した。
西部の電力会社は野心的な脱炭素政策と火災リスクに苦慮
バークシャー・ハサウェイ傘下のパシフィコープは米国西部で電力供給を行っているが、特にオレゴン州での山火事に関連する訴訟の多額の賠償金が経営を圧迫している。同社は今年初め、ワシントン州で約20億ドル相当の資産売却を発表したが、その理由として、「6州にまたがる政策の違いが、需要に応える信頼性とコスト削減を困難にしている」と説明した。
また、ワシントン州は野心的な脱炭素化目標を掲げており、パシフィコープはこれに反発。同社は他州の顧客にコスト上昇を強いる仕組みだと主張している。西部では、山火事による損害賠償が電力会社の経営を脅かし、カリフォルニア州のPG&Eは破産に追い込まれたケースもある。
東部でも電気料金の高騰が問題に
一方で東部では、電気料金の高騰が市民の不満を招いている。電力会社側は、脱炭素化や再生可能エネルギーへの移行に伴うコスト増を指摘するが、規制当局は料金抑制を求める。この対立構造が、業界全体の再編を迫る可能性が出てきた。
今後、電力業界は規制の枠組みの見直しを迫られ、業界再編や新たなビジネスモデルへの転換が進むとみられる。しかし、その行方は依然不透明だ。