ティム・クック氏のApple CEO就任当初は、業界アナリストの間で「スティーブ・ジョブズ時代のような革新的な製品を生み出せるか?」という議論が巻き起こった。ジョブズ氏がAppleに復帰した後、iMac、iPod、iTunes Music Store、iPhone、iPhone App Store、iPadといった革新的な製品が次々と発表されたからだ。しかし、クック氏の時代は、ジョブズ氏のような突破的なイノベーションよりも、着実な改良と効率化が特徴となった。
クック氏はロジスティクスの天才であり、製品開発の第一人者ではなかったため、その戦略はむしろ当然の帰結だった。その結果、クック氏は歴代最高のCEOの一人と称され、Appleは依然としてAppleであり続けた。そして9月、クック氏が上級副社長のジョン・テルナス氏にCEOの座を譲ることが発表された。テルナス氏は引き続きAppleのエグゼクティブチェアマンとして在籍する。
今回の移行は、前回ほどのドラマはなく、テルナス氏が何をすべきかという議論も少ないと予想される。しかし、その中で最も注目すべきは、テルナス氏がソフトウェア分野でクック氏を上回る成果を上げる可能性だ。テルナス氏は2001年にAppleに入社し、ディスプレイの開発に携わってきた。近年、その存在感は高まっているものの、社外ではまだあまり知られていない。主にハードウェアのスペシャリストとして評価されており、Appleのデバイスの品質向上に貢献してきた。
特に、Appleが独自のCPUに移行してからリリースされたMacBook Air(2020年)や今年のMacBook Neoなどは、年々着実に改良されてきた。しかし、クック氏がCEOを務めた約15年間、Appleのソフトウェアはハードウェアと同様の成長軌道を描いてこなかった。確かに目立った成功例もある。例えば、Vision ProのvisionOSは傑作と評価され、いずれはより手頃なヘッドセットで動作することを期待したい。その一方で、Apple Mapsの初期バージョンの失敗(2012年)や、その他のソフトウェアの問題点を挙げるのは容易だ。Apple Mapsは、地点Aから地点Bへの正確な案内という基本機能すら満たせなかった。
テルナス氏はハードウェアのプロとしての実績を持つが、ソフトウェア分野での課題解決が、Appleの未来を左右する鍵となるだろう。ハードウェアの品質を維持しつつ、ソフトウェアの競争力を高めることが、新CEOに求められる最大のミッションだ。