Peacockの現状:4600万会員、100億ドル超の損失
動画配信市場の再編が進む中、NBCユニバーサル傘下のPeacockは厳しい立場に置かれている。2020年のサービス開始以来、4600万の有料会員を獲得したが、累計で100億ドルを超える損失を計上。最新四半期の赤字は4億3200万ドルに拡大した。その一方で、同社経営陣は第2四半期に黒字化に「接近する」との見通しを示している。
ParamountとWBDの合併がもたらす脅威
Peacockにとって最大の課題は、ParamountとWarner Bros. Discovery(WBD)の合併だ。総額1100億ドル規模のこの合併により、2億人超の会員を擁する巨大プラットフォームが誕生。Netflix、Disney+/Hulu、Amazon Prime Videoと肩を並べる存在となる。Peacockの会員数の差はますます顕著になり、顧客獲得競争はさらに激化する見通しだ。
メディア専門家らは、TheWrapの取材に対し、Peacockは今後、コンテンツ戦略の大胆な転換と差別化が求められると指摘。同社の顧客離れ率(チャーンレート)は、リサーチ会社Antennaの調査によると9%と主要ストリーマーの中で最も高い水準にある。ただし、Peacock関係者はこの数字を否定し、業界平均並みの水準だと主張している。
Peacockの差別化戦略:放送テレビの再定義を目指す
Peacockは、他社との単純な会員数競争ではなく、視聴時間のシェア獲得を重視する戦略を掲げる。NBCユニバーサルの直接消費者向けメディア部門社長、マット・シュトラウス氏は、SXSWのパネルで「真の戦場は会員数ではなく、視聴時間のシェアだ」と述べ、NBCユニバーサルは「ファン層へのサービス向上」で勝負すると強調した。
この戦略は一定の成果を上げつつある。Nielsenのメディア・ディストリビューター・ゲージによると、2024年2月にはNBCユニバーサル全体のテレビ視聴シェアが13%に達し、ミラノ・コルティナ五輪とスーパーボウルが牽引した。Peacock単体でも同月のプラットフォーム別視聴シェアで過去最高の3%を記録し、オリジナルシリーズ「The Burbs」が貢献した。このほか、1月のスピンオフによりケーブルネットワークがVersantに移管されたことで、同社の視聴シェアの3%がこれに充てられた。
専門家の見方:Peacockの天井は低いのか?
「消費者の加入疲れが既に顕著な中、Peacockの立場は厳しい。合併が直ちにPeacockを消滅させるわけではないが、成長の天井を押し下げる可能性が高い。高価値IPの獲得競争は、ライバルがWBDのIPリッチなライブラリーを引き継いだ今、さらに厳しくなる」
アーロン・メイヤーソン氏(Qualia Legacy Advisorsマネージング・ディレクター)
メイヤーソン氏は、Peacockの戦略を「より防衛的なアプローチ」と評価する一方で、これは「同サービスの成長限界を暗に認めるものだ」と指摘した。
Peacockの今後:ファン層の囲い込みが鍵に
Peacockは、放送テレビの再定義とNBCユニバーサルの世界観の拡大を掲げ、他社との差別化を図る。しかし、Hub Entertainment Researchの調査によると、1600人の消費者を対象としたアンケートで、Peacockの認知度は98%に上るものの、そのサービス内容や競合との違いを説明できる人は64%にとどまった。ファン層の囲い込みと明確な差別化が、今後の成否を分けるカギとなる。