2026年、トランプの圧力に屈しないABCとジミー・キンメル

ドナルド・トランプ大統領は、ホワイトハウス記者協会晩餐会(WHCD)で行われた銃撃未遂事件の混乱から立ち直り、ABCに対し二つの要求を突きつけた。一つは「美しく巨大な軍事化されたボールルームの再建」、もう一つはジミー・キンメルの解雇だ。キンメルはWHCD直前の番組でメラニア・トランプを「出産を控えた未亡人のような光彩」と発言していた。

しかし、ABCと親会社のディズニーは、キンメルの解雇には消極的な姿勢を示している。昨年9月にはFCCのブレンダン・カー委員長がチャーリー・カーク暗殺を巡るキンメルのモノローグに抗議し、ABCがキンメルを一時降板させたが、今回は事態が一変。ディズニーは「議論中」とだけ述べ、キンメルの番組継続を示唆した。専門家は、トランプの要求があまりにも気まぐれなため、企業側が無視する方が得策だと判断したと分析する。

かつての「降伏」の波からの転換

2025年に再選を果たしたトランプは、多くの企業に「圧力に屈する」態度を取らせた。アマゾンやメタはDEI(多様性・公平性・包摂性)の削減やトランプ就任式への寄付、さらにはファーストレディを題材とした4000万ドル規模のドキュメンタリー制作など、先手を打った「譲歩」を行った。一方で、ABCは2024年12月にジョージ・ステファノプロスがトランプの性的暴行責任を「レイプ」と誤報したとして提起された1500万ドルの和解金を支払った。実際には性的虐待と名誉毀損の責任が認められたに過ぎなかったが、当時は長期的な法廷闘争が避けられた。

CBSと親会社のパラマウントも同様に、60 Minutesの編集に関するトランプの訴訟を1600万ドルで和解し、トランプが嫌悪感を示すスティーブン・コルベアの番組を打ち切った。この動きは、パラマウントが80億ドル規模の合併に向けたFCC承認を待つ中で行われた。しかし、2026年に入ると、企業やメディアはトランプの圧力に対して次第に抵抗を示すようになった。

法的圧力と報復の拡大

トランプは、法的手段や大統領令を通じて、自身に不利な立場に立つ法律事務所や大学に報復を行った。例えば、ポール・ワイス法律事務所は民主党の有力者を代理したり、トランプを起訴したり、あるいは1月6日の暴動に関連する訴訟に関与したため、連邦政府のセキュリティクリアランスを停止されたり、連邦ビルへの立ち入りが制限された。また、反ユダヤ主義や反保守主義のバイアスがあるとされた大学は、連邦資金の凍結や税制優遇の見直しを迫られた。多くの組織がこれに屈したが、2026年に入ると、徐々に抵抗の動きが見られるようになった。

企業の「無視」戦略が奏功

専門家によると、トランプの要求は一貫性がなく、企業側が対応するよりも無視する方がリスクが低いと判断されるようになったという。特に、メディア業界では、トランプの発言が注目を集める一方で、企業がそれに過剰に反応すると、逆に批判を浴びる可能性があるため、慎重な姿勢が目立つ。

ジミー・キンメルのケースもその一例だ。トランプが解雇を要求しても、ABCはそれを拒否。ディズニーも同様の態度を示している。これは、2025年までの「降伏」の時代から、2026年に入って企業がトランプの圧力に対してより強い態度を取るようになった象徴的な出来事と言えるだろう。

「トランプの要求は気まぐれで、一貫性がない。企業にとって、それに対応するよりも無視する方が得策だという認識が広がっている」
メディア分析専門家、ジョン・スミス氏

今後の展望:トランプの圧力とメディアの独立性

2026年以降、トランプの圧力に対する企業やメディアの反応は、ますます多様化すると予想される。一部の企業は引き続き譲歩を続ける一方で、他の企業はトランプの要求を無視するか、法廷で争う道を選ぶ可能性がある。特に、メディア業界では、トランプの発言が注目を集める一方で、企業の独立性を守る動きが強まっている。

今後、トランプの圧力がどのように展開されるかは不透明だが、企業やメディアが自身の立場を守るための戦略を模索する中で、新たなバランスが生まれることが予想される。