米国の元大統領ドナルド・トランプ氏が、ウォールストリートジャーナル紙(WSJ)を名誉毀損で提訴した訴訟が、司法の壁に直面している。フロリダ州南部地区連邦地裁のダリン・ゲイルズ判事は11月12日、トランプ氏が同紙に対し「悪意の立証」に基づく証拠収集(ディスカバリー)を求めることは「不適切」であり、認められないとの判断を示した。

判事は判決文で、「トランプ氏が名誉毀損の主張を十分に立証できていない状況で、ディスカバリーを許可すれば、高額な費用をかけた無根拠な訴訟につながる」と指摘。第11巡回区控訴裁判所が警告する「費用のかかる無駄な訴訟」の典型例だと退けた。

トランプ氏は2025年7月、WSJが報じた「自身がジェフリー・エプスタイン氏の誕生日アルバムに手紙と露骨な図画を寄稿した」との記事について、事実無根の名誉毀損に当たると主張し、提訴した。しかしゲイルズ判事は4月に同訴訟を却下。トランプ氏側が「悪意の立証」を十分に示せていないと判断した上で、訴状の修正を認めた。だが今回、トランプ氏はWSJの悪意を立証するための証拠収集も不可能となった。

一方で判事は、トランプ氏が再度訴状を修正する余地を残した。しかし、下院監視委員会が9月にエプスタイン氏の遺産から公開した資料に、トランプ氏による図画が含まれていたことから、3度目の敗訴の可能性が高まっている。

さらに、トランプ氏の司法省が今週、イラン戦争に関する国防総省の機密情報漏洩を巡り、WSJの記者に対し捜査令状を発行したことも、同紙の発行元ダウ・ジョーンズが「憲法で保障された報道活動への攻撃」と非難している。トランプ氏によるWSJへの攻撃は、報道の自由を侵害するだけでなく、法的根拠に乏しいとの見方が強まっている。