アムネスティ、ネバダ州のリチウム採掘プロジェクトに人権侵害の疑いを指摘

米国政府と民間企業がリチウムなどの重要鉱物確保を推進する中、ネバダ州における先住民の権利が侵害されていると、アムネスティ・インターナショナルが15日、報告書を発表した。同団体は、ネバダ州内の全てのリチウム鉱山に対する連邦許可の一時停止を求めている。

ネバダ州は米国のリチウム埋蔵量の約85%を占める「リチウムの宝庫」とされ、電気自動車や蓄電池の主要原料として注目を集めている。しかし、Thacker Pass Lithium Mine(サッカー・パス鉱山)、Nevada North Lithium Project(ネバダ・ノース・リチウムプロジェクト)、Rhyolite Ridge Lithium-Boron Project(ライオライト・リッジ・リチウム・ボロンプロジェクト)の3件の主要プロジェクトは、いずれも西部ショショーニ族やパイユート族が「返還を要求する土地」と主張する公有地に位置している。

先住民の同意なき開発、国際基準に違反か

アムネスティの報告書によると、これら3件のプロジェクトは、先住民の「事前の自由かつ十分な情報に基づく同意(FPIC)」を得ていないとして、国際人権基準に違反している可能性があるという。FPICは、先住民の土地やコミュニティに影響を及ぼすプロジェクトに対し、先住民が同意するか拒否するかの権利を保障する国際基準だ。

「ここは私たちの土地です。何が起こるかを決める権利があります。しかし、彼らは私たちを排除したがっているのです。なぜなら、ネバダ州は鉱物資源に恵まれているからです」

フェルミナ・スティーブンス(テ・モーク・トライブ・オブ・ウェスタン・ショショーニ族メンバー、Western Shoshone Defense Project代表)

サッカー・パス鉱山は既に建設中で、ライオライト・リッジは今年後半に着工予定、ネバダ・ノースは探査段階にある。アムネスティは、これらのプロジェクトが「先住民の権利に関する国連宣言(UNDRIP)」やFPICの基準を満たしていないと指摘する。

「人権よりも鉱物優先」の構図に疑問符

アムネスティ・インターナショナルのビジネス・人権部門責任者マーク・ダメット氏は、「企業は人権よりも鉱物獲得を優先すべきではない」と述べ、国際人権基準の遵守を求めた。また、同団体はトランプ政権による規制緩和推進が、先住民の同意プロセスを阻害していると批判。連邦機関による環境審査の簡略化や許可の迅速化が、先住民の意思決定参加の機会を奪っていると指摘する。

これに対し、米内務省の報道官は「この報告書の背後には、エネルギー生産に反対し、裁判で繰り返し敗訴してきた活動家がいる。彼らの主張は根拠がなく、米国民に利益をもたらすエネルギー生産を阻害するものだ」と反論。また、連邦土地管理局(BLM)によるネバダ州のリチウムプロジェクトの審査では、包括的な環境審査と先住民との協議の機会が設けられたと主張した。

「グリーン・トランジション」の影で続く先住民の抵抗

ネバダ州では現在、2万件を超える鉱業権申請が行われており、リチウム採掘ブームが加速している。しかし、この動きは世界的な「グリーン・トランジション」の流れの中で、先住民による反対運動が続いている現実も浮き彫りにしている。アムネスティは、鉱物獲得のために先住民の権利を犠牲にすることは、持続可能な未来の実現に逆行すると警告している。

出典: Grist