米国の選挙制度を巡る党派間の攻防が激化している。フロリダ州の共和党知事ロン・デサンティスは、州議会に対し、共和党優位となる選挙区改編案の採択を迫っている。同案が成立すれば、民主党が議席獲得を目指すバージニア州の選挙区改編法案の効果を相殺する形となる。
バージニア州民主党の動きは、共和党のゲリマンダー戦略に対抗するためのものだったが、共和党はこれに反発し、フロリダ州でさらなる議席拡大を図っている。しかし、これは共和党が常に民主主義の規範を無視して権力維持を図る構図の一例に過ぎない。
共和党のゲリマンダー戦略の歴史的背景
2010年代、共和党は選挙区改編を通じて、民主党と共和党の支持率が拮抗するノースカロライナ州やウィスコンシン州で、州議会や連邦下院議席の大半を占める圧倒的優位を確保した。一方、民主党優位の州では、公平な選挙区割りを目指す独立委員会の導入が進んだ。
2021年、民主党は連邦レベルで全米50州に独立委員会の導入を義務付ける法案を提出したが、共和党議員や民主党のジョー・マンチン、キルステン・シネマ両議員の反対により頓挫した。昨年には、ドナルド・トランプ前大統領がテキサス州など共和党支配州に対し、10年ごとの通常の改編サイクルを無視した選挙区改編を指示した。
共和党の民主主義軽視の実態
民主党が選挙区改編の公平化を目指す一方で、共和党はゲリマンダーを通じて議席確保を図る。メディアの報道も、共和党への偏見を避けるあまり、こうした党派間の非対称な戦略を正確に伝えていないとの指摘がある。
共和党の民主主義軽視は選挙区改編にとどまらない。2016年の最高裁判事任命では、大統領選挙直前の指名を「時期尚早」と拒否した共和党が、2020年には選挙直前の指名を強行。2020年大統領選挙の結果を否定する根拠のない訴訟を数多く提起し、選挙結果を覆そうとする暴動を扇動した。さらに、全国各地で選挙資料の差し押さえを行い、不正選挙の主張を正当化しようとしている。
米国最高裁判所の保守派判事らは、オバマ前大統領やバイデン大統領の行政行動を次々と違憲判断で阻止する一方で、トランプ前大統領の行政行動には寛容な姿勢を示している。
民主党の対応は「最小限の抵抗」に過ぎない
こうした共和党の行動を踏まえると、民主党がカリフォルニア州やバージニア州で選挙区改編の公平化に動かなければ、共和党がフロリダ州でゲリマンダーを断念していたとは考えにくい。民主党の動きは、共和党の戦略に対する「最小限の抵抗」に過ぎないのだ。
現在の共和党は、中立的な政治プロセスを信じておらず、権力を失う可能性すら許容しない。そのため、民主党がどのような対応を取ろうとも、共和党は常にゲリマンダーを通じて議席確保を図る構図が続いている。