Amazonで「家庭用蒸留器」と検索すると、液体の揮発成分を分離・濃縮する装置が数多く表示される。中には「ウイスキー」「ブランデー」「ジン」「ウォッカ」などのアルコール飲料を製造する目的で設計された製品もある。しかし、これらを実際に飲用目的で使用すれば、連邦法違反の重罪に問われる可能性がある。
米国では1868年から、酒税徴収を目的とした法律の一環として、自家製蒸留酒の製造が禁止されている。この古い法律は今日でも有効だが、最近の2つの控訴審判決により、その合憲性が改めて問われている。
控訴審で分かれた判断
昨年12月、米国第5巡回区控訴裁判所は、McNutt v. U.S. Department of Justice事件において、家庭蒸留禁止法を「税収目的として正当化できない」との判断を下した。一方で、その11日後に第6巡回区控訴裁判所はReam v. U.S. Department of Treasury事件で、連邦政府の課税権と「憲法が認める必要不可欠な法律制定権」を根拠に禁止法を合憲と判断した。
この相反する判決により、連邦最高裁がこの問題を取り上げ、連邦政府の権限の範囲に関わる重要な司法判断を行う可能性が高まっている。
法的根拠と罰則
連邦法26 U.S.C. § 5178(a)(1)(B)は、蒸留酒製造プラントを「住居内や住居に隣接する小屋・庭・囲い、あるいは船内」に設置することを禁止している。また、26 U.S.C. § 5601(a)(6)によれば、この禁止令に違反した場合、最大1万ドルの罰金、5年以下の禁固刑、またはその両方が科される可能性がある。
第5巡回区の判断内容
第5巡回区控訴裁判所は、テキサス州北部地区連邦地裁判事マーク・T・ピットマンが2024年に下した永久差止命令を支持した。この命令は、連邦政府がスコット・マクナット氏とホビーディスティラーズ協会(HDA)のメンバーに対して家庭蒸留禁止法を執行しないよう命じたものだ。
同裁判所は、禁止法が連邦議会の課税権に基づく正当な行為とはいえないと結論づけた。さらに、禁止法が州際通商を規制する権限(Commerce Clause)に基づくものでもないと判断した。第5巡回区は、政府が控訴審で通商条項の主張を放棄したため、この点についての審議は行わなかった。
判事エディス・ジョーンズは、自身の意見書で「マクナット氏が争った条項は、表面上も実質的にも税収とは無関係だ」と指摘した。同判事は、これらの条項が「自宅蒸留を禁止するだけでなく、蒸留酒の生成を阻害する反収入規定」に該当すると述べた。「これらの条項は税収を増やすのではなく、むしろ減少させる」とジョーンズ判事は強調した。
第6巡回区の判断内容
一方で第6巡回区控訴裁判所は、連邦政府の課税権と憲法第1条第8項に規定された「連邦議会が必要と認めるすべての法律を制定する権限」を根拠に、禁止法を合憲と判断した。同裁判所は、連邦議会が税収確保のために必要な措置を講じる権限を有していると結論づけた。
最高裁の判断に注目
このような控訴審間の対立(いわゆる「サーキット・スプリット」)は、連邦最高裁が問題を取り上げる大きな要因となる。最高裁は、連邦政府の権限の範囲や憲法解釈に関わる重要な司法判断を行う機会として、この案件を検討する可能性が高い。
家庭蒸留の合法化を求める運動は、蒸留愛好家やクラフト蒸留業界からも支持を集めている。しかし、連邦法の改正には議会の承認が必要であり、今後の動向が注目される。